昨日インドネシアのバリ島で、主要20か国・地域首脳会議(G20サミット)が開催された。ロシアのプーチン大統領は自身への批判・攻撃が激しいことを予想して代理にラブロフ外相を派遣した。議長国インドネシアのジョコ大統領が開会のスピーチで「戦争を終わらせなければならない。世界を分断すべきでない。もうひとつの冷戦に向かわせてはいけない」と戦争回避について述べたが、これはロシアのウクライナ侵攻を深く追い詰めはしないもののやんわりと非難したものであり、中立の立場を貫いてきた国々からも戦争終結を求める声が相次いで出された。
しかし、ロシアのラブロフ外相は戦争停止の交渉を拒否するウクライナ側に責任があると、ロシアの責任を回避するような発言をする有様である。例年なら会議の最後に出席者全員が揃って壇上で記念撮影するところだが、今年はそれすらしなかった。救いどころは、前日14日にはバイデン氏と習近平総書記による米中首脳会談が初めて行われたのをはじめ、各国首脳による個別会談が開かれ、お互いの主張を述べ合ったことである。昨晩開かれた晩餐会にはアメリカのバイデン大統領が欠席した。どうもギクシャクしたような雰囲気があるようだ。
明けて今日は、突然ポーランド東部のプシェヴォドヴォにロシア製ミサイルが着弾し、2人が死亡した。そのことを各首脳が話し合ったが、どうやらウクライナがロシアのミサイルを標的に地対空ミサイルを発射したものがポーランドに墜落したらしい。G20 会合は「大半のメンバーがウクライナ戦争を強く非難し、甚大な人的苦痛をもたらし、世界経済の既存の脆弱性を増幅していると強調し、情勢・制裁について異論や異なる評価があった」との首脳宣言を採択して閉会となった。
ついては、バイデン大統領がアメリカを離れている今日、かねがね噂されていたトランプ前大統領が、2024年の大統領選へ出馬することを表明した。「アメリカを再び偉大で輝かしい国にするために大統領選挙への立候補を表明する」と異例の出馬宣言をした。出馬表明は選挙の前年に行われるのが通例である。それを敢えてこの時期を選んだというのは、それなりの計算というか下心があったからである。最大の理由は、連邦議会襲撃事件や機密文書持ちだし事件などを巡り、トランプ氏自身が訴追される可能性があることであり、もうひとつの理由は、先日行われた中間選挙直前のメディアによる予想が、かなり共和党に有利な風が吹いていたことから、積極的に支持候補者を売り込み彼らの当選によって選挙地盤を固めておこうとの思惑があったからである。この思惑は、中間選挙で共和党圧勝の予想が外れたことにより狂ってしまったが、それでも当初の計画通り出馬を公表するに至った。
残念ながらトランプ氏の思惑通りには、支持した候補者が当選しなかったことによりトランプ氏への支持が弱くなり、あまつさえ共和党の次期大統領候補には、他にフロリダ州デサンティス知事や、ペンス前副大統領らが浮かび上がっている。
それにしてもトランプ氏が性懲りもなく次期選挙に打って出ようとしているのは、アメリカに再び栄光をというより、虚栄心と自己満足のためであるとしか思えない。バイデン大統領は、これまでトランプ氏を公然とは批判しなかったが、よほど腹に据えかねたのか、「金持ちのために経済を不正に操った」、「大恐慌以来の水準に雇用を悪化させた」、「医療保険制度を攻撃した」とトランプ氏の大統領在任中の政策を批判した。トランプ氏は選挙で負ければ不正があったと騒ぎ立て、卑しくも連邦議会堂へ暴力的になだれ込むなんてとても常識人のやるべきことではない。残念ながらアメリカ大統領選への投票権はないが、もし仮に投票権があったとしても、とてもトランプ氏へ一票を投じる気にはなれない。