少子高齢化と言われ出して人口の伸びが鈍化してから久しいが、それは日本や中国、欧米などの先進国には当てはまる。しかし、世界的な規模で考えるとその流れはむしろ逆であることに意外な感がある。世界の人口は平均寿命の伸びや幼児、赤ちゃんの死亡率の低下を背景に年々増加を続けて、この10年で約10億人も増え、今日80億人の大台を突破した。私が中学生になった頃は、概ね世界の人口はまだ25億人程度だった。このまま増え続けて、2080年には104億人を超えてピークとなり以後減少に転じると見られている。それでも南アジアの一部の国々やアフリカなどでは、今後も大幅な人口の増加が見込まれて、何とインドが来年には長年の一人っ子政策の結果人口減少が目立ってきた中国を追い抜き、世界で最も人口が多い国になるという。
現段階では、2050年まで人口がこのまま増え続ける国は、インド、パキスタン、フィリピンのアジア3か国に、エジプト、ナイジェリア、エチオピア、タンザニア、コンゴのアフリカ5か国の計8か国だそうだ。この中でナイジェリアとコンゴ、タンザニアは訪れたことがないが、他の5か国を見た限りでは、やはり経済的にはかなり遅れていることを国民の生活実態から実感したものである。人口増加の波は特にアフリカに目立ち、現在その人口は世界全体の18%を占めているが、2050年までには4人にひとりがアフリカの人々となるという。
ついては、今アメリカは多民族国家と言われて種々雑多の人種が生活しているが、国内の人種差別が一向に止む兆しが見えない。そのアメリカでは主流派の白人アングロサクソンが減り、ヒスパニックや黒人が増加している。例えば2014年には、白人の割合は62.2%だったが、2060年には43.6%にまで減少すると見られている。白人は全アメリカ人口の半分以下に減ってしまうのだ。いずれさらに少数派となるだろう。この趨勢を考えると、2年前までトランプ前大統領が無許可移民阻止のために築いた国境の壁は何のために築かれたのか意味不明である。この間ヒスパニックは、17.4%→28.6%、黒人12.4%→13.0%、アジア人5.2%→9.1%となり、白人王国のイメージは湧いてこない。今後白人が極端に減った場合、アメリカの人種差別はどういう結末を迎えることになるだろうか。
現在インドの人口は、約14億人であるが、国連の人口機関などは、人口の増加に伴って貧困、栄養失調、教育などに十分なサービスが行き届かなくなることを懸念している。実際ユニセフが食糧難で多くの子どもたちが命を失っているとしてボランティアや寄付を呼び掛けているが、その依って来る原因はすべて貧困からである。つまり貧困が人間の生育を妨げるということが心配なのである。果たして、このまま貧しい国々で人口が増える傾向を同じ人類として黙っていてもよいものだろうか。「貧すれば鈍する」や、「衣食足りて礼節を知る」を肝に銘じるべきであろう。