今月に入ってから消費者物価の値上げが激しくなり、消費者から家計が苦しいと悲鳴が聞こえる。政府もない知恵を絞って物価対策に懸命で、補助金交付を主に考えているようだが、これという妙案はない。物価上昇率も最近ではほぼ毎月3%を記録し、この上昇率は消費税率引き上げの影響を除けば、1991年8月以来、実に31年ぶりのことである。昨日から家庭では今や必需品となった乳製品が値上げされたことにより、益々家計へのしわ寄せが増している。この他に家庭にとって欠かせない電気代が前年に比較して21.5%、ガス代が19.4%という大幅な値上げとなり、一般の家庭ではどうしようもなく、給料のアップを望むより手がない。
一方、昨日財務省が発表した2021年度第4四半期法人企業統計によると、一般の消費者物価とはかけ離れて、各企業とも好調な決算で、全産業の経常利益は前年同期比13.7%増、22兆8千億円となり、過去最高となったというから俄かには信じられない。そのせいもあるのだろうか、昨年度の企業の内部留保が500兆円をこえて、これまた10年連続で最高を更新したというから分からないものだ。企業はコロナ禍の隙間を縫って儲けても、企業内に貯め込んで直ぐに社員に分配するということはやらない。家計のやりくりで苦しんでいる社員へ少しでも還元するように給料をアップすれば、それだけで家庭はどれだけ救われることだろうか。
会社経営者にとって、得た利益をそっくり社員に還元するということは通常考えられない。将来的に不景気時を考慮して、いつも内部留保をため込むことを頭に入れている。利益をどれほど社員に還元するかは、組合、つまり日本労働組合総連合会(連合)の腕次第である。近年この連合が妙に経営者、政府与党に歩み寄り過ぎて労働者の切実な声をアピールし、目的を達することが少なくなっている。昨年10月に女性会長として初めて就任した芳野友子氏の政治力、交渉力が弱いせいもあるのだろう。共産党とはまったく話し合う気持ちがないようで、これまでの組合リーダーの姿勢とは随分違う。これでは、企業が得た利益の一部でも還元してもらうのは、厳しいようだ。労働者にとっては、益々厳しい冬を迎えることになりそうだ。
さて、近年お隣づきあいが薄くなり、近くで顔を合わせても挨拶どころか、声もかけないという話をよく耳にする。これが現代風とでも言うのだろうか。我々が子どもだったころに比べて随分つれなくなったものだ。実際ご近所で顔を合わしても挨拶を交わすのは精々左右の向こう三軒両隣くらいで、道路を隔てた新興住宅に住む若い人たちとは、ほとんど挨拶を交わすことはない。地方都市ならあり得ないが、都会では段々向こう三軒は縁遠いものとなったようで、一抹の寂しさを感じる。
実は、今朝の朝日新聞「声」欄に投書された79歳の男性が、登山中に出逢った登山者に声をかけたが、無反応だったと嘆いていた。登山中に行き会った人に声をかけ、応答があったのは約7割ということに、失望と同時に自分自身も相手の心境を慮ると仕方ないと分ったと書いているが、私にも思い当たることである。私自身学生時代と会社では登山クラブに入っていたので、年中山登りをしていた。山中で登山者と行き会えば、まずは「こんにちは」とか、「おはようございます」と声かけをして、必ず同じような返事が返ってきたものだ。こういう会話が少なくなったことは、山中ばかりでなく世間で挨拶が交わされなくなった最近の一般的な風潮である。挨拶や、普通の会話を気兼ねなく交わすことが親近感を深め、固く緊密な人間関係を築くことが出来ると思うのは、今風からはずれているのだろうか。