5543.2022年10月24日(月) 温暖化ガス排出に間違った抗議行動

 とても許せないバカげた抗議行動がヨーロッパで相次いで起きた。世界的な名画に異物を投げつけた事件である。最初に今年5月パリのルーブル美術館で、レオナルド・ダ・ヴィンチの世界的名画「モナリザ」に向かって老婆に扮した男がケーキを投げつけた。幸い名画は器物破壊防止用ガラスのケースに収められていたので、物損はなかった。次いで今月14日にロンドンのナショナル・ギャラリーでゴッホの「ひまわり」に、胸に「JUST STOP OIL」と書いたシャツを着用した2人の若い女性がトマトスープらしき液体を投げつけた。これは額縁が傷ついた程度で済んだ。推定価格は、約125億円と言われている名画である。

 そして昨日ドイツ・ポツダムのバルベリーニ美術館でモネの「積みわら」にマッシュポテトを投げつける事件が起きた。この作品は2019年のオークションでドイツ人富豪が約164億円で落札してバルベリーニ美術館で展示中だった。作品は幸い無傷だった。

 それにしても、どうしてこうも無意味で馬鹿々々しい事件が起きるのだろうか。これらの事件を犯したのは、揃って環境活動団体だったのも意外だった。地球上から汚染物質の排除を願った活動家が、なぜ世界の宝とも思える芸術作品を損傷させようと試みたのだろうか。とても理解し難いし、実に馬鹿げている。

 モネの作品にマッシュポテトを投げつけたドイツ環境活動団体「ラスト・ジェネレーション」の支持者2人は、「人々は飢え、凍え、死んでいる。私たちは気候の破局を迎えている。あなたが恐れているのは、絵に描いたようなトマトスープやポテトだけだ」と筋違いの言い分を述べている。これを所属環境団体は、「社会に対して『芸術と命、どちらがより価値があるか』という問いかけができる」と主張し、同団体スポークスマンは、「モネは自然を愛し、そのユニークで壊れやすい美しさを作品に取り込んだ。モネがその魔力を賞賛したこの世界そのものの破壊よりも、これらの現実のイメージのひとつが損なわれることの方を恐れる人が、これほど多いのはなぜだろうか。キャンパスに描かれた牧歌的な世界に没頭するのではなく、現実を直視しなければならない。食料と水の奪い合いをしていたら、芸術を鑑賞する暇もない!」と、見当はずれのコメントを述べている。

 そんな能書きを言わずに、どうして世界的遺産を傷つけることなく、直接温室効果ガスに反対し、削減する活動へ突き進まないのか。はっきり言って、この抗議のやり方は100%間違っている。実は、ロンドンを拠点とするギャラリーやアート専門家らはアート業界における温室効果ガスを削減するためにNPOギャラリー気候連合を設立した。日本ではほとんど報じられていないが、それほどヨーロッパでは温室効果ガスが地球を破壊しつつあることに真剣に取り組んでいる。

 だが、彼らはやり方を完全に間違えている。この抗議のやり方が、環境団体の間では常態化しつつあるようで、7月にロンドンでダ・ヴィンチの「最後の晩餐」の複製画に身体を接着させたり、同じ7月にフィレンツェでボッティチェリの「春」に身体を接着させた事件が続いた。今月9日にはメルボルンのビクトリア国立美術館でピカソの「朝鮮の虐殺」に、その名を知られた「エクスティングション・リベリオン」の気候活動家が自分たちを接着させた事件も起きている。

 一連の名画攻撃事件は、世間へのアピールを大きく間違えているように思えて仕方がない。

2022年10月24日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com