5534.2022年10月15日(土) 求心力が低下したプーチン大統領

 ロシアが9月に発表した30万人の予備役招集の結果、反対のデモや国外へ脱出する若者が相次いでロシア国内は混乱し、そのうえ第2の招集が噂され動員拡大への不安が広がっている。プーチン大統領の支持率も低下して政権基盤がやや揺らぎ始めた。プーチン氏はこの状態から当分追加動員を先延ばしすることを決断した模様だ。

 プーチン大統領への信頼はロシア国内ばかりでなく、旧ソ連邦独立国の間でも気持ちが離れている。昨日カザフスタンで開かれた旧ソ連構成国の独立国家共同体(CIS)首脳会議でプーチン氏が結束を呼び掛けたが、明らかにウクライナ侵攻後は影響力が低下しており、CISの盟主であるロシアの地位が揺らぎ始めていることを示した。CISはソ連が崩壊した1991年12月に発足し、現在9カ国が加盟している。そのCIS加盟国の内、12日の国連総会でロシア非難決議に反対したのは、盟主であり被非難国ロシア自身とロシア侵攻を支持しているベラルーシの僅か2か国だけだった。ウクライナ侵攻の直接的な理由としてロシアが挙げたのは、ウクライナ国民をネオナチの非民主的抑圧から解放することだった。だが、実際にネオナチ的言動を行っているのは、今のロシア自体であり、それはCIS加盟国にも見透かされている。去る7日プーチン氏の誕生日に合わせてCIS非公式の首脳会議を開催した時には、キルギスのジャパロフ大統領は欠席し、CISで作る軍事同盟「集団安全保障条約機構」(CSTO)は予定していた合同軍事演習を理由もなしに前日に中止した。ロシアによるタガは緩みっぱなしである。

 CISを開催したカザフスタンは、プーチン大統領が一方的に併合宣言をしたウクライナ4州について、「領土保全の原則を尊重する」として承認しない考えを表明した。これまで盟主のロシアの言いなりになり、押さえつけられていた旧ソ連独立共和国が、主体的にロシアの檻の中から飛び出しつつある。今や疲労困憊気味のロシア、並びにプーチン大統領に対して同盟国、或いは国内から少しずつ反対者が出て、ロシア離れが加速し、いずれプーチン帝国も瓦解することになるのではないかと期待を込めて注視したいと思っている。
 そして、アメリカとロシアが互いに首脳会談を避けている中で、アメリカのロシアへの非難は手厳しい。だが、アメリカ自体も足元を見てみると国内に多くの問題を抱えている。来月行われる中間選挙を睨み、やや旗色が良くないバイデン大統領の民主党にとって、図らずも共和党のトランプ前大統領の疑惑を追及する動きが強まって来た。トランプ氏を追い詰めている疑惑は3つある。ひとつは、昨年1月の議会襲撃事件への関与であり、2つ目は、大統領退任時に大量の機密文書を自宅へ持ち帰った疑いであり、3つ目は、ニューヨークの不動産価格を不当に高く評価して有利な条件で融資を受けたとする疑いである。

 最初の議会襲撃事件について、一昨日下院特別委員会でトランプ氏を証人として召喚する決議を可決した。民主党としては、トランプ氏の責任追及を中間選挙の追い風にしたい思惑があるようだ。いずれにせよ、アメリカも足元に火が点いた騒ぎで、内憂外患というところだ。アメリカはロシアの求心力失墜を他山の石とすべきであろう。

2022年10月15日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com