5530.2022年10月11日(火) アントニオ猪木の隠れた意外な人気

 先日亡くなった元プロレスラーのアントニオ猪木について、彼がこれほど多くの人に愛され、功績を評価されていたとは意外な感がした。所詮プロレスは真剣勝負ではないとプロレスラーを過少評価していたが、昨日日本のプロレスの歴史、選手を後世に残していくための組織「日本プロレス殿堂会」で、猪木の追悼セレモニーが行われた。弟子だった藤波辰爾、長州力らが涙が止まらなかったと師匠の死を悲しんだという追悼の言葉には見直したような想いである。たかがプロレスラーと思っていたが、人間的に他人の面倒をよく見て多くの人から慕われていたという。参議院議員としても、彼一流のパフォーマンスで、イラク戦争時には日本人人質解放に貢献し、その後も日本の国会議員が誰ひとり積極的に訪れようとしない北朝鮮に個人の資格として33回も訪れ、北朝鮮でプロレスを披露してあの北朝鮮で人気が高い。

 猪木には幾分パフォーマンス過剰の傾向があり、絶頂期のボクシング世界チャンピョンだったモハメッド・アリと一戦を交え、世界中が注目した。私もテレビで熱戦を期待していた。だが、彼の試合はファンの期待を裏切りはっきり言って顰蹙を買うほどつまらなくずるいものだった。開始から最後までラウンド中は、アリの強力なパンチを恐れたのか、猪木はほとんど仰向けに寝たまま足で蹴ることしか出来なかった。試合は結局両者とも相手に有効なダメージを与えなかったとドローに終わった。試合後メディアから酷評されたし、アリにとっても不愉快な試合だっただろう。プロの超一流選手同士がよくぞあんなお粗末な試合をファンに披露したものだというのが、試合後の私の感想だった。

 しかし、これらは我々門外漢があまり猪木へ深入りせずに、直観で思っていることで、彼が他人にはおいそれとは見せない隠れた本性があったのだろう。人を表面的な一面だけで見てはいけないということを知らされたようなの人間性でもある。あまりにも無責任に思っていた仮面の猪木像と、骨身を惜しまず、人のために尽くす人間的に優れた猪木像とのあまりに大きなギャップに愕然とした次第である。

 どうしてアントニオ猪木が亡くなってからなぜ彼に関心を抱いたかと言う、彼の生きざまに似たある女性について書かれたドキュメントを偶々読んでいたからである。その女性とは軍事アナリストの小川和久氏の母上フサノさんの半生に至極共通するところがあった。先日小川氏から「『アマゾンおケイ』の肖像」なる高著をいただき、9月30日付本ブログにも取り上げ現在読書中であるが、主人公「おケイ」と母のフサノさんのことで、猪木と同じように7歳で叔父叔母に付いて移民としてブラジルへ渡り、その7年後単身帰国した。その間尋常小学校しか通わなかったが、自ら英語や、英文タイプを身に着け、カフェ、ダンスホール、クラブなどを経営し、手に仕事を覚えてから上海へ渡り、アメリカ人外交官と恋に落ち、厳しい試練の中で日本へ戻り、42歳で小川氏の母となり97歳で亡くなられた。まだ読み込んでいない箇所に新たな意外性があるかも知れないが、猪木も幼時ブラジルへ渡り17歳で力道山に素質を見出され、日本へ帰国してプロレス界の巨人となった。2人には共通性があるように考えている。

 それにしても私にはその根拠がよく理解出来ないが、昨日の朝日朝刊に作家夢枕獏氏がアントニオ猪木を悼むとして「ファンタジーに捧げた肉体」という寄稿文が載っている。夢枕氏は猪木が大好きだからと、日本が世界に誇る3大偉人として、空海、宮澤賢治、アントニオ猪木ら3名の名を挙げていほど病膏肓に達している御仁である。真面とは思えないほど少々異常に買い被っておられる。

 だが、考えようによっては、人間というのはそれほど多面性があり、ある側面だけ見ただけではその人物の本質は分からないものだということを改めて思い知らされたような気する。

2022年10月11日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com