先日の安倍元首相国葬の際、友人代表として弔辞を述べた菅義偉元首相の評判が予想外に良かった。菅氏が銀座の焼き鳥屋で、第1次政権が短命に終わった安倍氏に対して2度目の挑戦を促し、かなり時間を費やした後に安倍氏からOKの回答をもらったことを自画自賛した。評判が良かったのは次のエピソードで、岡義武著「山縣有朋」を引き合いに、山縣有朋が先立った伊藤博文を偲んで詠んだ一首、
「かたりあひて 尽くしゝ人は 先立ちぬ 今より後の 世をいかにせむ」
について安倍氏の書の中にマーカーが付いていた。それに気づいた菅氏が、山縣が伊藤を慕った気持ちと同じように、安倍氏への想いを重ねていると言った。このスピーチを聞いた時、菅氏のプライベートなスピーチを聞いたことがなかったが、中々気が利いたものだと思った。
ところが、今日あるツィッターを見て驚いた。何とこの山縣有朋の話は、安倍元首相が亡くなる1か月前に葛西敬之・JR東海名誉会長の葬儀で述べた弔辞の内容と同じだったというのである。安倍元首相が述べた弔辞を、今度はこともあろうに安倍氏への弔辞に菅氏が使ったわけである。菅氏の場合は、あまり私的な言動が公に伝えられることは少なかったが、それが偶々国葬という場でそれなりの評価を得た弔辞となったが、使いまわしだったとは驚いた。よくもやるものだなぁというのが本音で、呆れるばかりである。
政治家の発言というのは、あまり信用出来ないが、これほど恥ずかしい盗人的行為は他にあまり知らない。それにしても国葬という国の行事で、亡くなった人物のスピーチ内容をそっくりその人物へ伝えて泉下の安倍氏も面食らっているのではないか。この破廉恥行為には、よくぞこれで総理大臣まで務めることが出来たものだと呆れるばかりである。それだけ政治家の倫理レベルが低いということだろう。
さて、早くも10月に入ったが、今月は日用品から電気・ガス・水道料金が軒並み値上げされる。聞くところによれば、今月だけで6,600品目の値上げが予定されているという。これに加えて、高齢者にとっては厳しい後期高齢者医療費が、これまでの1割負担から倍の2割負担となる。収入源が限られた高齢者にとっては、かなり堪える筈である。そこには社会保障関係費が国家財政にとって過大になり、その負担が若者にしわ寄せされている事実がある。
しかし、大きな議論を国会や、一般社会で話し合ったり詰めることなく、ただ過大な負担であるとの理由だけで医療費を2倍にするという乱暴で浅はかな考えは、愚かな政治家たちだから出来ることだろう。苦しくなった財政の中でも他に賄える費用がある筈である。元々多過ぎる国会議員の数と給与を減らすことも当然考えても好い。とりわけ防衛費なんて現状緊急的支出ではあるまい。防衛費の支出に関しては、自民党議員は誰も歯止めをかけようとしない。アメリカから高額な軍事物資の購入を求められれば、黙って支出する。一方で、高齢者の医療費負担は増額を黙認するだけである。真の意味で予算管理を行っているとは言えない。