2030年に冬季オリンピック招致を目指す札幌市の秋元克広市長が、山下泰裕・日本オリンピック委員会(JOC)会長とともにスイス・ローザンヌで国際オリンピック委員会(IOC)トーマス・バッハ会長と会う予定でいたところ、直前になってIOC側から今はタイミングが悪いという返答があった。2030年大会には、過去に開催した実績のあるバンクーバーやソルトレークシティが招致を進めていると聞き、つい早とちりをしてしまったようだ。
実はこの裏には東京オリンピックの贈収賄事件があった。今大きな話題と注目を集めている昨年の東京オリンピックがらみの贈収賄事件が影響して、しばらくオリンピックに関する動きを注視しようとの考えがあるようだ。東京オリンピック絡みの贈収賄については、不祥事が後から後へと暴露され、その中心人物で組織委員会理事だった高橋某が収賄容疑で逮捕された。その一方でスポンサーとして紳士服の㈱アオキ、出版社のカドカワ書店、そして大阪の広告代理店「大広」らが贈賄容疑で次々と社内捜査を受けている。
かつてはオリンピックなんか金食い虫と揶揄され、金を生み出すなんて発想はまったくなかったが、近年のオリンピックは商業オリンピックと言われて走る広告塔とか、プレイする広告塔と言われて広告に囲まれてスポーツをやっている印象が強い。そのため今やマネージメントを広告会社1社に絞り、大会すべての商業広告を取り仕切る形になっており、それを東京大会では電通が差配していた。その電通の元役員だった高橋某がかつて知った内部事情から、取り巻きをうまく引っ張り込み収賄の旨味を味わっていたようである。
昨日の朝日朝刊社説に「五輪汚職~札幌招致どころではない」と厳しく批判している。東京大会の贈収賄事件は海外でも報道され、注目されている。また、札幌招致は市民との間に感覚のずれがある。社説では、山下JOC会長の行動についても手厳しい。組織委員会副会長を務めていながら元理事の脱線を招いた当事者として、重い責任がある。その自覚さえあれば、招致運動どころではない筈だと痛いところを突いている。また、室伏広治・スポーツ庁長官が「残念というか、悲しいようなニュースを見るたびに悲しく、つらい思いをしている」程度の発言しか出来ないことに失望したと断じている。オリンピックのような大きなイベントには、それ相当の資金が要る。いかにスポンサーがいようと、それでも大会開催国としては相当の税金を投入することになる。これを公明正大に開催し、世界中の人びとが喜んでくれれば、文句なしであるが、どこかに隙があると必ずスキャンダルが生れる。日本でも、すでに冬季大会は長野でも札幌でも開催した実績があるので、札幌市民の間に開催反対の声が強いなら、無理に開催する必要はないと思う。
それにしても今捜査中の贈収賄事件は、いつになったら解決するのだろうか。未だに中心人物の高橋氏はすべての収賄容疑を否認している。東京オリンピックはコロナ禍のせいで1年延期されて開催されたが、人一倍の工夫と努力をして開催大成功と世界中から称賛の声をもらった。その裏側でとんでもない悪だくみが行われて、東京大会成功に大きな傷をつけてしまった。残念でならない。
その点では、スケールは遥かに小さかったが、ラグビー・ワールドカップは成功裡に終わった。2019年日本各地で開催されたラグビー・ワールドカップは、流行語大賞となった「ワン・チーム」のスローガンと、「ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために」の合言葉を流行らせ、大成功を収めたことは忘れられない思い出となった。どこが違ったのだろうか。