定期購読している「NATIONAL GEOGRAPHIC」(略称:ナショグラ)日本語版9月号が今日送られてきた。1995年4月日本語版の創刊と同時に購読を始めて、今でも毎月発行される新刊号を楽しみに待っている。全般的に内容が充実しているので、読み応えがあり、隅から隅まですべてに目を通すことは出来ないが、興味深そうな特集を拾い読みしている。この雑誌の素晴らしいのは、取り上げた記事の内容もさることながら写真が美麗で、珍しい写真が多いことである。20年間に亘って海外教育視察団にお供した折に、アメリカではどこの小中学校の図書館にも必ずナショグラが1冊は置かれているのに気づき、日米の初等教育の視点の違いを知らされたものである。特に自然、歴史、外国文化、冒険に関する特集記事などは、日本の学校教育ではまず習うことがない。日本の学校では目に触れることがないような記事がふんだんに載っていることに驚く。偶々9月号に「戦禍のイエメンで歴史を守る」のタイトルを一目見て、紀元前1000年に始まったイエメンの歴史から、今年4月ハディ大統領辞任までの歴史の変転を分かり易く解説しているのに興味を惹かれた。
イエメン史の節目に「1967年11月独立」と書いてある。ちょどその直後にアデンを訪れたので、何とも忘れられない史実である。当初は68年1月に独立の予定で、私がその直前に駐日イギリス大使館で入国ビザを取得した。だが、独立が繰り上げされ、私がアデンへ着いた時は、すでに独立国となっており、イギリス大使館で取得した入国ビザが無効となり、直ぐには入国許可をもらえなかった。急遽新独立国で改めて入国ビザを申請、取得して、日本人として初めて入国を許された複雑な経緯がある。
「ナショグラ」には、イエメンの歴史は、砂漠の国として3千年前の発祥当時は隊商王国だったと紹介されている。激しい宗教的対立は今に始まったものではなく、多神教からユダヤ教とキリスト教が広まり、7世紀からイスラム教国家となった。9世紀から1960年代まで北部ではイスラム教でもシーア派の勢力が強まった。そして、拙著「八十冒険爺の言いたい放題」でも触れたが、1939年以降イギリスによるアデン港の28年間に亙る植民地化などが、国家歴史上の史実として紹介されている。こういう記事をアメリカの子どもたちは、授業で教えられなくとも知らず知らずのうちに目にして、知識として身に着けていくのではないだろうか。とても日本では外国の歴史については表面的な史実しか教えない。このことが日本人とアメリカ人が史実を歴史的に、また同時に現実的に捉えるか、はたまたイメージ的に捉えるかの差になるのではないだろうかと考えている。
書物は、それとなく読んでいる内に頭の中に想像力が働き、それに歴史的史実が添えられれば歴史はしっかり頭の中に植え付けられ、歴史的史実を思考の中心に据えた思考力、想像力が身に着くのではないかと考えている。
最近やや読書量が低下している。もう少し気楽に考えながら読みたいと思った書物を読まなければ、知識や思考力は衰えるばかりである。ナショグラに目を通しつつ、知の源泉である読書力を高めていかなければいけないと思っている。