5560.2022年8月3日(水) 台湾がらみで米中が一触即発

 昨晩遅くアメリカのペロシ下院議長が台北空港に着いたが、その真偽を取り交ぜた訪問目的の臆測が絡み、米中両国で批判合戦が行われている。先月28日行われたアメリカのバイデン大統領と中国の習近平国家主席との電話会談で、大統領は台湾有事の際はアメリカが軍事関与するとはっきり伝えた。これに習主席は激しく反発した。バイデン政権にとっては秋にはやや民主党劣勢気味の中間選挙を控えているだけに、中国に先手を取られている印象をアメリカ国民に与えたくない。習主席にしても今秋開催の共産党大会で、憲法改正をしてまで主席在任期限を延長した第3期目を目指すためには、強いリーダーシップを発揮しておきたところである。

 そんな中国が非難する中で敢えてペロシ議長が台湾を訪れたのは、南シナ海の海洋進出、新疆ウィグル自治区少数民族抑圧、言論弾圧と非民主化、更には香港の一方的な支配で中国の覇権的行動が露骨になっており、これにブレーキをかけさせるための中国政府への牽制とも言える。

 しかし、メンツをつぶされた習主席と中国政府の抵抗は予想以上に激しく、主権と領土保全を侵害されたと猛反発した。すぐさま昨晩から台湾周辺で軍事的な威嚇行動を本格化した。4日以降7日まで台湾を取り囲む6か所の海空域で軍事演習、実弾射撃を行う。同時に経済面でも台湾産の農水産物の輸入停止措置を発動した。経済面で台湾を揺さぶる狙いのようだ。

 今や核戦争も視野に入って来た時代に、刺激的な行動は出来るだけ控えるべきであり、アメリカの台湾支援政策のやり方はあまり賢いとは言えない。これほど事前に中国政府から警告や非難を受けたら、時期をずらすとか、ペロシ議長以外の議員に派遣を変更するとか、次善の策を講じても良かったのではないだろうか。

 一方、中国の主張と行動は台湾問題に限らず、あまりにも自己中心的で非民主的な面が強い。それだけにアメリカが世界2大国の民主主義国家の旗頭とのプライドに拘るのは分かる。ただ、台湾にこれほど精神面で力を貸すなら、なぜ香港の自治権である1国2制度を瓦解させたような、中国政府の「国家安全維持法」施行による一方的な侵略を黙って見過ごしてしまったのか。1979年カーター大統領の下で米中国交正常化は合意された。その際最大の懸案事項だった台湾問題に関しては、アメリカが台湾に武器援助を続けることを条件に台湾政府と断交することになった。どっちもどっちだが、その辺りに今以てわだかまりが見られ、訪れないフリをしながら台湾訪問を強行したペロシ議長の行動も案外読み取れる。ペロシ議長は今日中に台湾を去り、この後韓国を経て、明日日本を訪れる。

 さて、今では国際社会から忘れられがちであるが、国際テロ組織アルカイダの指導者、アイマン・ザワヒリ容疑者が、7月31日何と潜伏先のアフガニスタン・カブール市内で殺害されたとのニュースが伝えられた。昨年アフガンから撤退したアメリカが、その日午前6時過ぎにバルコニーにいたザワヒリ容疑者をドローンで殺害したというから、2011年5月に潜伏中のビン・ラディン容疑者を暗殺した際には、潜伏先に米特殊部隊が乗り込んで殺害したころに比べてドローンの精度も随分上がったものだ。今も相変わらずアフガンの政治的、社会的、経済的混乱は収まる気配がない。イスラム原理主義に拘るタリバン政権は、果たしてアフガン国内の不安定な治安を沈静化してくれるだろうか。

 それにしてもドローンにここまで確実に的を外さない技術が備わって来たとするなら、プーチン大統領も枕を高くして寝ていられないのではないだろうか。

2022年8月3日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com