5432.2022年7月5日(火) 世界中の人々に毒を盛ったプーチン

 ウクライナ情勢の悲劇的な戦況が連日伝えられているが、遂にロシアはウクライナ東部のルハンスク州のほぼ全域を制圧した。これによりロシアはもうひとつの東部ドネツク州を含むドンパス地方全域の支配を目指して、一層攻撃を強める気配である。

 ロシア国民は、ロシア政府お墨付きの報道のみを信じ込まされ、ウクライナへのミサイル攻撃や、その攻撃により商店、学校などが壊滅され多くの子どもたちが死亡させられたニュースはほとんど知らされていない。徹底した報道管制により、事実を都合よく取捨選択し、自国にとって有利な情報しか国民には伝えていないからだ。同じことは、専制君主国家の中国や北朝鮮についても言える。

 今朝の朝日新聞「オピニオン&フォーラム」に20年以上も母国ロシアを離れスイスに居住しているロシア人作家のミハイル・シーシキン氏が、「プーチンは皇帝か」との論文を寄稿している。氏は論文冒頭からロシア人であるということに苦痛を覚えるとぼやいている。戦争犯罪人の言葉として母国語ロシア語が恨まれる。報道管制下にあるロシアのテレビは、爆撃されたウクライナの街や子どもたちが殺害されたのは、ウクライナのファシストの仕業だと説明し、ロシア軍はアメリカに押し付けられたファシスト政権からウクライナを解放しているのだと今もロシア国民を信じこませている。

 シーシキン氏の不安と悩みは、ロシア人の国民性と旧ロシア帝国のツァーリと呼ばれた皇帝たらんとするプーチン大統領、そしてプーチン後に皇帝となる後継者である。

 プーチンはこのウクライナ戦争では、最後まで戦うだろうと推測している。私もそう思う。彼は旧ロシア帝国の絶対権者ツァーリを目指している。勝利が真のツァーリである唯一の証であるからである。ただ、シーシキン氏は彼に勝ち目はないとも見ている。シーシキン氏の不安は、ロシア国家と国民には絶対君主であるツァーリを生む土壌があるということである。ロシア国民は今でもあの殺人鬼スターリンを愛し、アフガニスタン戦争と東西冷戦でも敗れたゴルバチョフを軽蔑しているという。プーチンが姿を消しても、次の独裁者が誕生する下地がロシアにはあるという。新たにプーチンのような独裁者を生ませないためにも、ロシアは帝国的意識の浄化や真の脱プーチン化において新しく生まれ変わることが必要だと説いている。更に、国民的な罪の意識と悔恨がなければ、ロシア人とロシアという国にはいかなる未来もあり得ないとまで言っている。

 プーチンの罪は、ロシア人のみならず多くの人々に憎しみという毒を持ったことだ。それ故プーチンがいなくなっても、痛みや憎しみは長く心に残る。こうまで言い放っているが、シーシキン氏が懸念しているように、プーチンがいるかどうかとは別に、ウクライナ戦後もロシアの国家体制に変更がなければ、恐れている疑似プーチン皇帝が現れることだろう。果たして、覇権国家となったロシアには、次のプーチンを生ませない備えがあるだろうか。

2022年7月5日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com