5382.2022年5月16日(月) 事件の報道がメディアによって歪められる。

 昨日の本ブログに、最近昭和のクーデター・5.15事件がほとんど報道されないと嘆き節を書いたところ、今日ツィッターに望月衣塑子・東京新聞記者が、今朝の東京新聞に5.15事件に関して、日本近現代史が専門の小山俊樹・帝京大教授の分析を紹介していた。小山教授の解説によると当時の日本国内には、昭和恐慌のさなか1930年のロンドン海軍軍縮会議の結果への不満、並びに31年の満州事件発生で社会的に不安定な時代という事情があり、その不安な空気の中で政友会犬養毅首相が青年将校によって殺害された5.15事件が起きた。その後後継首相に海軍出身の斎藤実が就任し、日本の軍事国家化が進んだ。しかし、昭和天皇が当時の政党政治に不信感を抱いていたとの指摘には、記事から真意を読み取ることが出来ない。

 納得出来るのは、世論が実行犯に同情的で当時の新聞も「憂国の至情」と言って一部の新聞を除いて大勢は世論に水を差す論調は少なかった。驚いたことに前年満州事変が勃発した影響で新聞の販売が伸びたために、新聞社が軍部から情報を得るため軍部に迎合したと見られたという。

 実際実行犯である青年将校らは、軍刑法の反乱罪で起訴されたが、首謀者は法定刑が死刑しかないにも拘わらず、禁固刑15年、他の被告たちも求刑よりも大幅に軽くなったというから当時の新聞上に「5.15事件被告に感激 減刑運動猛然起こる」と全国の在郷軍人らも減刑のために立ち上がり、それを新聞が後押しした効果があったのだろう。

 それにしても5.15事件について書物は別にして、メディアで具体的に報道されたのは最近ほとんど記憶にない。小山教授は、事件の背景には昭和恐慌の中で格差の拡大や、社会不安の増大という現代との共通項もあったし、同時に実行犯に甘かった新聞の影響も少なくなかったと指摘している。良かれ悪しかれ日本の歴史上で大きなランドマークとなった事件でもあり、それは2.26事件についても言えることである。5.15事件に比較すれば、2.26事件はまだ取り上げられるケースが多いが、それでも近年あまりメディアで報道されるようなことは明らかに減った。メディアはもっと公平な立場から日本の歴史的画期的な事件の事実を、ありのままに報道することは責務であると思う。

2022年5月16日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com