5470.2022年5月5日(木) 自己本位のロシアによる入国禁止処分

 昨日ロシア外務省は、岸田首相ら政治家、学者、メディア関係者など日本人63人のロシア入国を無制限に禁止すると発表した。言うまでもなく日本がロシア軍のウクライナ侵攻に対して、欧米と足並みを揃えて対ロ制裁を行ったことへの報復措置の一環である。岸田首相は、現在イタリアを訪問中であるが、訪問先で「軍事的手段に訴えて今回の事態を招いたのはロシア側だ。日ロ関係をこのような状況に追いやった責任は、全面的にロシアにあるにも拘わらず、このような発表を行ったことは断じて受け入れることは出来ない」と強く批判した。

 63人の顔ぶれを見てみると、何となくロシアから疎外されそうだなと思える人物が含まれている反面、意外な人物の名前も挙がっている。政治家では自民党閣僚らのリストアップは止むを得ないとしても、日本共産党の志位和夫委員長や、スポーツ評論家の二宮清純氏、月刊誌「選択」発行人の湯浅次郎氏のリスト入りはどうにも不可解である。とりわけ志位委員長がロシアに嫌われたのは、理解に苦しむ。ソ連崩壊前は、共産党の本山であるソ連共産党の手足となって社会主義、共産主義の啓発のために地道に活動していた日本共産党の働きぶりをまったく評価していない。例え、それが「ソビエト社会主義共和国連邦」から「ロシア連邦国家」に衣替えしたにしても、ソ連邦時代に社会主義発展のためにスケールは小さいながらも精一杯努力し、ソ連に協力してきたのが日本共産党である。例え日本共産党が、共産主義をまったく実践していないとして交流を中止した中国共産党と同様、ロシアに対しても愛想尽かしをしたとしても、ロシアは志位委員長を締め出すのは理解に苦しむ。それを日本の保守政治家とともに一蓮托生扱いにするとは、何と恩知らずの国家だろうか。

 読売新聞、産経新聞、日本経済新聞の社長ら首脳陣合わせて9名も名指しされたのは、日ごろの反ロシア論からして読売及び産経は理解出来るが、純然たる経済紙である日経幹部の入国禁止は理解出来ない。それにしてもメディアに関しては、ロシア政府には鷹揚に清濁併せ呑む考えが見られない。これはすでにロシア国内でも反政府系メディアが言論統制に晒されている実情から、プーチン大統領がお気に召さなければすべて排除しようとの考えだろう。

 ひとつ興味深いのは、湯浅「選択」発行人の指名である。もう20年余に亘って興味深く購読している「選択」は、幅広い分野に鋭い視点と追及、及びその分析力は他の雑誌には見られないものだ。そのため槍玉に挙げられた個人や、企業が名誉棄損で司法に訴え、彼らとの間で年中裁判騒ぎが続いていると聞いている。

 因みに「選択」5月号にも、ロシア関係の記事がかなり掲載されている。例えば、「プーチンの寝首を掻くのは誰か」「中央アジアでプーチンに『反旗』」「人民解放軍に走る『ロシア・ショック』」「習近平専制で進む『ロシア化』」「北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター 期待に応えぬ『ロシア専門家集団』」等である。同誌4月号にも「邪悪さ増す『中露の枢軸』」「プーチンはどう幕を引くのか」「ロシア情報機関に『反乱』の兆候」「国際法廷はプーチンを裁けるか」「在日ロシア大使館」「欲望渦巻くサハリン『ガス権益』」「ロシアに沈黙の『安倍と森』」等である。これではロシア政府が怒るのも無理はないか。だが、一読者として「選択」に目を通す限り、読み応えがあり、どこからも得られない情報が詰め込まれていて、いつも目を覚まされるような気になる。それにしても先ず自ら反省してから、相手に持論を述べるという考えが、プーチン帝国には、まったくないようだ。

2022年5月5日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com