5357.2022年4月21日(木) 昨年度貿易収支は真っ赤っか

 このところ円安が急激に進み、去る3月11日に117円台だったのが、一時は130円台にまで落ち込み、20年ぶりの円安相場と言われている。それにはいろいろ原因があるが、アメリカのドルが高くなった反動がある。その他には、ロシアのウクライナ侵攻に対するロシアへの経済制裁により西欧諸国がロシアから石油、LPガスの輸入を停止したことが影響している。

 こんな時期に昨日財務省が3月の貿易統計を発表したが、過去2番目に大きい赤字額で、年間でも過去4番目の5兆3千億円の赤字を計上した。エネルギー資源の高騰と円安による輸入額の増加が、主たる赤字の原因である。現状ではエネルギー資源の高騰が収まる見通しはなく、このまま貿易赤字が続くと見られている。

 最近自民党内部でウクライナ情勢を考え、防衛費の増額が検討されている。5年後をメドに国内総生産(GDP)の2%以上を目指したい意向のようだ。2%なんて数字をそう簡単に言われても困る。歴史を遡って1976年三木内閣では、防衛費はGDPの1%を超えないことを決めた。87年中曽根内閣当時の予算では、その1%を超えた。幸いその後GDPが拡大したこともあり、ほとんど1%以下に収まって来た。それが防衛予算の使い道として高額な防衛機材の購入もあり、とても1%では収まり切れなくなり、今では2%をひとつのターゲットにしている節がある。奇しくも今年度の防衛予算額は、5兆4千億円でほぼ今年度貿易赤字額と同じである。自民党内では、防衛費をウクライナ侵攻というドサクサにまぎれてやみくもに予算を分捕ろうとの腹が見える。

 財務省は、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国では、国防予算の拡大とセットで財政の健全化を進めていることを例に上げている。例えば、スウェーデンでは、国防費増額の財源にたばこ税や酒税の引き上げをセットにして決めている。ドイツでも国防費の増額を決めたが、同時に財源をはっきり示している。その点日本では、安易に国債の発行など国家の借金に頼る脆弱な発想しか生まれない。国家財政を預かる財務省としては、健全な財政を維持するために経済、金融、財政の総合力が大切だと考えているが、自民党内にはそこまで考えている賢者はいない。

 大体今年度の国家予算だけで防衛費が吹っ飛ぶような国家の赤字額が出ている。来年度以降も予断は許せない。そうなれば、防衛費に注ぎ込む余裕は益々厳しいものとなる。政治家の発想には、財源には頓着なく「守備を固めて攻撃に出る」の考えがないことが無性に気になる。

2022年4月21日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com