5348.2022年4月12日(火) 想い出のシベリア鉄道がデフォルトに

 ロシアのウクライナ侵攻を機に、世界各国からロシアへの非難が集中し、ロシアに対する経済制裁が極めて深刻なものとなり、徐々にロシア経済を苦しめている。

 そして遂にその第1弾がロシアを襲った。ロシア国営鉄道会社「ロシア鉄道」が、外貨建て債務の利払いができず、デフォルト(債務不履行)との認定を受けたことがわかった。ロシアのウクライナ侵攻以降、ロシア企業のデフォルト認定は、これが初めてである。ロシア鉄道と言えば、当然最大の売り物である「シベリア鉄道」を経営している。そのシベリア鉄道もデフォルトの影響を受けることになる。ウラジオストックから首都モスクワまで9,300㎞、時差が7時間もある長い区間を7泊8日もかけて走行する。私が乗車したのは、もう20年も昔の3月初旬で都市はもちろん、車窓から眺める森林風景はどこも夢幻的な銀世界だった。雪の季節に訪れた理由のひとつは、トルストイの「復活」に惹かれていたからである。ヒロイン・カチューシャが殺人犯としてシベリアへ送られ、それをネフリュードフ公爵が雪の中を追っていく方向とは逆に、私はモスクワ方面に向かった。作品のイメージはロマンに溢れておりその情景と雰囲気を現場で感じてみたかったからである。確かにコンコンと降り続く雪の中を走り抜けるのはロマンチックだった。

 今のJR各社の高級列車に比べれば、その設備等は大分見劣りする。私が乗ったのは4人1室の2等車だったが、座席だけの3等車は家族連れのロシア人でいっぱいだった。素朴で変哲もない外の景色を眺めているだけで、やや退屈だったが、満足感に浸れた。太陽が地平線に沈むシーンは何とも言えず神々しかった。

 あのシベリア鉄道は、デフォルトによってどうなるのだろう。そして沿線に住んでいるロシア人たちの生活はどんな影響を受けるのだろうか。

 ロシア鉄道は3月にスイス・フラン債権(約340億円)の利払い期限を迎えて、ルーブルで支払うつもりが、制裁により西側の金融機関が協力せず、受け取ってもらえずデフォルト(債務不履行)第1号となってしまった。ロシア鉄道はロシア政府の鉄道部局をその前身としており、隈なく路線がロシア全土を走っており、従業員の数も約77万人を数えるというからスーパーマンモス企業である。現実的に倒産となれば、彼らも路頭に迷うことになる。

 それにしても今ではロシアへの旅行はもちろん、海外旅行も思うように出来なくなってしまった。ロシアへの旅行はしばらく無理だろう。ロシアのような広大な国は、現地を訪れてみなければ、その実態は分からない。その点で、武者修行でシベリア鉄道に乗ったことや、30年前にシベリアの戦没者遺骨収集の調査で、つい最近ウクライナ避難民がロシア軍によって連行、移住させられたとの噂も出たサハリン方面へ旅することが出来たことなどは、今思えば貴重な価値のある旅だった。

 ロシアが強気一辺倒でこのまま突き進むのか、或いは自己反省して制裁から解放されロシア鉄道のデフォルトも解除されてロシア社会も安定状態を取り戻せるのか、プーチン大統領にとっても正念場である。

2022年4月12日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com