5333.2022年3月28日(月) 友人の住むセルビアの複雑な立場

 相変わらずウクライナに対するロシア軍の攻勢は、衰える兆しが見えない。部分的にはウクライナ軍の抵抗が激しく後退を余儀なくされているエリアもあるが、東部マリウポリ地域は空陸攻撃により街は完膚なきまでに破壊されている。欧米の首脳らは、いかにプーチン大統領に戦争を終わらせるかを考えあぐねている。
 日本の海外報道がとかく欧米寄りのきらいがあり、些か中立性、公平性で首を傾げざるを得ない点があるが、それでも伝えられるニュースを見る限りロシアに肩入れする人はほとんどいないようだ。

 先日セルビアの首都ベオグラードに住んでいる友人、山崎洋さんから西欧寄りの主張の点で厳しい指摘があった。大学卒業以来約60年に亘ってセルビアに住み、前世紀末の北大西洋条約機構(NATO)軍の激しい空爆によって厳しい生活を強いられた彼の言い分だと、もう少しロシアの立場に配慮した論調をメディアが伝えないことに不満を漏らしていた。彼のメッセージを友人らに送ったところ、理解する友人もいた。

 今朝の朝日新聞に「EUかロシアか 揺れるセルビア」と題した記事が掲載された。主張は、これまで民族や宗教が似通うロシアと関係が深かったセルビアが、去る2日の国連緊急特別会合で、ウクライナに侵攻したロシアを非難する決議に賛成したことが各国を驚かせたという内容である。更に、セルビアはロシアへの圧力を強めつつある欧米とともに賛成に回った背景には、ウクライナを支援するEUへの加盟を目指していることもある。その一方で、セルビアはロシアへの経済制裁には加わっていない。それは、セルビアの自治州だったコソボが2008年独立を宣言した時、セルビアは国家として承認せず、ロシアも同じ立場に立ってくれたからである。

 しかし、ウクライナ侵攻は、セルビアにとっては「領土の一体性」の原則からロシアに対して反対せざるを得ない。ところが、ことコソボ問題に限れば、セルビアにとって「領土の一体性」を保障しているのはロシアだという複雑な構図である。ここにセルビアの悩みがある。

 以上のような主旨の記事を早速ベオグラードの山崎さんへメールで送った。セルビアはコソボ紛争でNATOの空爆を受けた過去があり、今も変わらずNATOへの反感が根強く、山崎さんもこの記事をどのように受け止めるだろうか。

 1984年に初めてユーゴスラビア連邦共和国を訪れた。その時通訳を務めてくれたのも山崎さんだった。今では、そのユーゴも今や6つの独立国家に分裂し、7番目の国家「コソボ」が誕生するかもしれないというバルカン情勢である。友人に何の手助けもしてやれないが、これからも揺れ動く複雑な国家の中で力強く生きて欲しい。

2022年3月28日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com