5318.2022年3月13日(日) ウクライナ戦争に複数の見方

 ウクライナ情勢は緊迫も頂点に達しようとしている。首都キエフを三方から攻めるロシア軍は、間もなくキエフに総攻撃を仕掛けて首都を陥落させて、ゼレンスキー大統領以下政府要人の身柄を拘束するのではないかと思う。プーチン大統領のロシアは、首都攻略によってウクライナに傀儡政権を樹立して背後で支配する考えである。例え、終戦となっても世界中から国際法違反として、またプーチン大統領は普通の市民を殺戮した不条理な戦争犯罪人として、いつまでもロシア並びにロシア国民は非難を浴びることだろう。

 旅行好きなロシア人にとってこんな笑えないドラマもある。タイのリゾート地・プーケットでロシア人観光客が立ち往生しているのだ。タイでは外国人観光客の中でもロシア人が最も多く、生憎ウクライナ侵攻に対する制裁でロシアの航空各社がタイ便を欠航し、加えて支払うべき滞在費用が、アメリカのクレジット各社が支払いを停止したため滞在費を支払うことも出来ない苦境に追い込まれている。タイの観光局が仲介をして国家同士の支払いを話し合うようだ。それにしてもウクライナ国民はすでに250万人も国外へ避難したというのに、ロシア人は気楽に海外旅行を楽しんだ結果が、母国に帰れない有様である。

 昨日セルビアに居住している友人、山崎洋さんからメールが送られてきた。半世紀以上も前に大学を卒業してすぐに父親(ゾルゲ事件ゾルゲの仲間、故ブランコ・ド・ブケリッチ)の母国旧ユーゴスラビアに渡り、爾来同地で逞しく生活している。厳しかったコソボ紛争などを身近に体験しただけに、東ヨーロッパの政治情勢については、西側サイドではなく中立的な立場からしばしば貴重な意見を伝えてくれる。今回のメールによると、ウクライナ戦争はセルビア人にとってはNATO空爆の悲劇を想起させ、西側のロシア非難はまったく偽善に映るという。20世紀末に勃発したコソボ戦争でNATOが、セルビア領内のコソボ地区に対して激しい空爆を行い多くの犠牲者を生じたことから、セルビア人はNATOに対して今以て好印象は持っていない。横浜市内に住み、すでに亡くなられた山崎さんの母上と生前電話でお話しした時、母上も激しい口調でNATOを非難しておられていた。

 彼のメールにひとつ祝福すべきことが記されていた。最近セルビア国から「功労金賞」という叙勲に与ったという。日本で言えば「紫綬褒章」のようなものだと言い、写真も添えてあった。ひとりでセルビアへ乗り込んで独自に活動し、国から業績を認められるようになったとは、素晴らしいことである。本人には、心よりおめでとうと伝えた。

 それにしてもうっかりしたことは言えない。我々の少ない情報や日本人目線ではどう考えてもロシアは国際法無視の極悪非道国家、況してやロシアを長らく支配している独裁者プーチン大統領は気が狂ったのではないかと思える言動がこびりついているが、少し視点をずらすことも必要なのかも知れない。

 さて、先月4日以来開かれていた北京パラリンピックが今日最終日となり、閉会式を迎えた。開会式に出席したプーチン大統領がウクライナ侵攻でそれどころではなく閉会式には出席しなかった。大会中にウクライナへ侵攻するなんてことは想像もしていなかった。そのせいで、折角競技会場まで来ていながら、ロシアとベラルーシの選手たちは、大会に参加出来なかった。ロシアにとっては首脳たちが取った行動により、撒いたゴミを拾わなければならなくなった。大会関係者にとっては、無事成功をと願っていただろうに、トップ政治家の腹積もりによって思いがけない不運を負わされることになってしまった。閉会式のプログラムはすべての点で開会式同様に見事なものだったが、どうも後味の悪いパラリンピックになってしまった。

2022年3月13日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com