5309.2022年3月4日(金) ウクライナ問題に寺島実郎氏の卓見

 ロシアのウクライナ攻撃が激しさを加え、遂にロシアはヨーロッパ最大級のザポロジェ原子力発電所を攻撃、制圧した。2度目の停戦交渉では、両国の条件をお互いに認めず、次回へ繰り越すことになった。双方が合意したのは、戦闘地域から民間人を避難させるための「人道回廊」を設置することだけだった。それなら戦闘を止めたら良さそうに思えるのだが、それが出来ない。まるでマンガである。ウクライナから他国へ避難したウクライナ人は100万人を超えた。これからも避難民の数は益々増えることだろう。

 そんなニュースが流れている時であるが、一昨日の朝日朝刊で全一面に掲載の「オピニオン&フォーラム」に寺島実郎氏への目を惹くインタビュー記事が紹介されていた。寺島氏は、日本総合研究所会長の傍ら、もう10年ほど多摩大学学長を務めておられ、テレビ番組でも日本のコメンテーター第一人者として、政治および経済ジャーナリストが触れないような斬新なお考えを披歴し活躍されておられる。インタビューでは、流石に寺島先生だと感服する進歩的な発言をしておられる。論点の概略は、ロシアとウクライナの歴史的つながり、日本がロシアを増長させた原因、ウクライナが核保有国第3位から核放棄した経緯、更に日本は核兵器禁止条約に参加して核攻撃を禁止するルールを主導すべきと主張され、日本は知の再武装を問われていると厳しい指摘をされておられる。

 寺島氏は、私もほぼ半世紀に亘り所属しているNPO[知的生産の技術研究会](略称:知研)顧問を務めておられ、10年ほど以前にはセミナーなどで何度となくお話しをしたことがある。2010年に知研編著「知の現場」を東洋経済新報社から発刊した際には、13人の有識者それぞれに知研会員が分担して取材をした。その13氏のひとりが寺島氏だった。寺島氏の取材には私も関わり、取材記事の執筆こそしなかったが、傍でインタビューのやり取りを伺って感銘を受けたことがある。私は13氏の内、4氏の取材記を書いたが、今以てそれぞれ4氏とのインタビューが強く印象に残っている。

 ウクライナについて多くの報道がなされているが、中には実情を知らずして語り首を傾げるようなコメントを述べる識者もいる。その点で寺島氏は深い知識のうえに、ご自分で現地を見ておられ、見識と臨場感を込めて発言されている。寺島氏のように表面的だけではない、歴史的にも知性的にもこなれた知識を持ったジャーナリストの積極的な発言をもっと聞いてみたいものである。

 さて、今日から北京で冬季パラリンピックが開催された。夜行われた開会式の演出は素晴らしいものだった。だが、残念ながらここにもロシアのウクライナ侵攻が大きな影を落としている。一昨日国際パラリンピック(IPC)は、ロシア・オリンピック委員会(ROC)とベラルーシの選手は、国旗を使用せず、国家も演奏しない中立の立場との条件付で出場が可能であると記者会見で公表した。ところが、1日経た開会式の前日の昨日になって、両国の選手は出場させないと状況が一転した。IPCは両国以外の国々から厳しい指摘を受け、逆に両国選手が出場するなら自分たちが出場を取りやめるとの声が高まった。急遽IPC内で再検討し、最終的にROCとベラルーシの選手の出場を認めないとの結論になった。両国の選手はすでに北京に到着している。目の前で開会式に出席出来ず引き返えさなければならない悔しさはいかばかりであろうか。ROCの選手は70人もいる。

 こんな点もロシアの野蛮で国際法を無視した暴挙から発生したものだ。政治家はよほど国民のことを考えて行動しなければ、国民を巻き込むような事態を引き起こすということを、他山の石として欲しい。

2022年3月4日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com