5344.2021年12月29日(水) 「GO TO トラベル」で旅行会社が不正受給

 昨日斎藤鉄夫・国土交通大臣が、政府の新型コロナウィルスで打撃を受けた観光業者への支援策「GO TO トラベル」事業の不正受給は断固許されないと述べ、観光庁はこれを悪用し給付金の不正受給問題を起こした、HISの子会社などを来年再開する「GO TO トラベル」事業への参加資格を停止すると発表した。

 今月初めには、菊間潤吾・日本旅行業協会会長が会長として務めるワールド航空サービス㈱が、同じく観光庁がコロナ支援策として実施していた雇用調整助成金を不正に受給した疑いで、協会会長職を辞任したばかりである。観光庁によると「GO TO トラベル」事業の不正受給で刑事事件になったのはすでに8件もある。いかに経営が苦しいからとて政府の支援策である助成金を騙し取るとは悪辣で言語道断である。

 実は、HISの子会社2社の内、ミキツーリストがこれに加担していたことに驚いた。ミキがHISの傘下にあることも全く知らなかった。私が旅行会社を退職する17年前までは、同社は国内のどの旅行業者の色も付かない完全独立のヨーロッパにおける宿泊、観光の1.2を争う手配業者だった。在職中に随分お世話になった。実は個人的に親しかった20名前後の顧客でグループを作っては退職直前まで毎夏ヨーロッパか、北米を旅行していたが、その際ヨーロッパの観光手配はすべてミキにお願いしていた。そのミキがいつの間にかHISの軍門に降り子会社化され、ここに至って観光庁による刑事告訴も免れない存亡の事態に追い込まれていたとは余りにも惨めである。新聞紙上に全面広告を打ち、ヨーロッパ方面に多くのツアーを募集し、販売していたHISの子会社になれば、営業活動をせずとも楽に仕事を得ることが出来て、経営的にも楽だと考えたのだろう。今海外観光は暗闇の中にあり、いつまでこの不景気な状態が続くのかは、コロナの終息次第であるが、例え解決しても一度失った信用を取り戻すのは容易なことではないと思う。

 今回の事件でHISの子会社2社と客室提供の契約を結んでいたホテル運営会社JHATも刑事告訴の対象になる模様だ。

 昨日発表されたHISの今年度10月期決算によると純損益が過去最悪の赤字500億円で、売上高は前年期比▲72.4%だという。子会社の不正で受け取った給付金や、不正に関連した取引などの売上高は20億円、純損益が3億95百万円の赤字だったというからいかに全社を挙げて大掛かりにやっていたかということが想像出来る。HISの沢田秀雄・会長兼社長は、自らを含む役員の処分を行うようだが、こういう悪質な経営者は旅行業界全体の秩序を乱す点からも、前記菊間会長ともども業界から永久追放してもおかしくないと思う。

 HIS及び子会社は、地道にこつこつと一から出直すことしか、顧客の信頼を勝ち取る方法はないと思う。

 ミキツーリストの手配でイタリア、スイスの山岳地帯を案内した2003年の最後のツアーの、手元にある手製のガイドブックに目を通しているとそぞろ懐かしさが蘇ってくる。実に惜しいことである。

2021年12月29日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com