5343.2021年12月28日(火) 世界遺産都市イスファハンの旱魃

 今朝の朝日1面を見てびっくりした。「イラン干上がる古都」の書き出しである。古都とは、イラン中部の世界遺産都市・イスファハンである。そのイスファハンの世界遺産の象徴は、スィ・オ・セ橋、イマーム広場、そして広場に面して建つジャーメ・モスクである。1999年にこの地を訪れたことがある。干上がったとされたのは、ザーヤンデ川に架かる建物のようなスィ・オ・セ橋で、私もここを渡った。水量が豊富とは言えないが、純然たる河川だった。このザーヤンデ川が干上がって川底がむき出しになり、乾燥してひび割れてしまった。川岸にはもう使用出来なくなった足漕ぎボートがいくつも並んでいるのが哀れみを誘う。ザーヤンデ川がこのような乾燥状態になったのは、2000年代の初めころからだということだから、私が訪れたころからぼつぼつ川の水が減り始めていたのだ。当時は水が少ないなんて考えもしなかったが、今写真でその様子を見るとかつてそこに川があったとは信じられず、寂しい気持ちになる。

 元々イランは降雨量が少なく樹木が市街や郊外にもあまり見られず、砂漠地帯が多くて水不足は深刻な国家的問題だった。代替え策として利用された地下水の汲み上げが進み過ぎたことが水不足の最大の原因らしい。このため地盤沈下も大きな問題となっている。イスファハンの年間降雨量は、僅か150㎜程度でとても当てに出来ず、ザーヤンデ川上流のダムもその貯水率は11%程度というから頼りにならない。最近の気候変動による水不足で、国民が違法な井戸をたくさん掘り、それが地盤沈下にもつながっているともいう。

 イラン政府も水不足に対する対応を求める農民の声に充分応えられず、その解消のため人口降雨を研究したが、効果を表さなかった。今漸く取り組み始めたのは、南部のペルシャ湾の海水を淡水化する計画でこれが実現出来ないとイラン国民にとっては死活問題となる。

 1967年に初めてイランを訪れた時に、首都テヘランからカスピ海沿岸都市・チャールースへ長距離バスで向かったが、その途中で西アジア最高峰・ダマヴァンド(標高5610m)の麓であるアモル道路上で暴風雪に出会った。その数日後雪崩が発生したほどの豪雪地帯である。見上げるダマヴァンドも雪にすっぽり覆われていた。天の恵みであるこの積雪を何とかしてイランの水不足に利用出来ないものだろうか。 

 いずれにせよイランの水不足はイスファハンの素晴らしい世界遺産の存在にも影響を与えかねない。

 国内だけの問題の内はまだしも、水管理は今や国際問題化しつつある。ひとつの川がいくつもの国々を通過する間に、国同士で利水問題が発生する。イランでは他に近隣国との間で水源を共存する河川が多く流れ、利水やダム建設をめぐってトルコ、イラク、アフガニスタンとの間で緊張関係が続いている。

 世界的な水不足の傾向を解決する方法は、やはり今世界的な課題となった地球温暖化を防止する対策を、確実に、かつ迅速に行うことだろう。

2021年12月28日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com