5341.2021年12月26日(日) ロシア人の旧ソ連へのノスタルジア

 「光陰流水の如し」と言われるように、あっという間に時は流れていく。私自身戦前の生まれではあるが、まだまだ壮年期と思っている間に来年は早くも7度目の年男となる。父の没年を考えると余命はあと10年しかないということになる。

 こんなことを想うのは、1991年の昨25日旧ソビエト社会主義共和国連邦のゴルバチョフ大統領が辞意を表明し、今日26日にソ連は消滅した。15の連邦はそれぞれ独立国となった。それから早や30年が経過したからである。当時ソ連の崩壊は衝撃的だった。ロシア革命により地上に初めて生まれた社会主義国家であり、万民平等と福祉社会を目指した新しい国家の出現で時の労働者に光明を与えたからである。ロシア革命を主導し、成功させたウラジーミル・レーニンの願いは理想的なものだった筈であったが、革命7年後に53歳でこの世を去った。マルクス・レーニン主義を継承したと思われたスターリンは、その後社会主義者ならぬ独裁者として権力を一手に収め、2500万人もの市民を殺害したとされる恐怖政治を行ったのである。社会主義はこの時点で雲散霧消してしまった。見かけだけを社会主義国家のように装ったところで実態は、むしろ社会主義の対極にある覇権主義、帝国主義に他ならなかった。

 その後マルクスが提唱する社会主義とはかけ離れた旧ソ連流「疑似社会主義」と、西欧の資本主義国家による東西の対立が激化し、国際的な緊張は膨らみ続けて東西対立を煽り一時、それは朝鮮戦争、ベトナム戦争、キューバ危機などに引火して第3次世界大戦の勃発も懸念されるような事態になった。ところが、社会主義経済の発展がままならず、国民誰ひとり失業者はいないことを目指していたのに、街に失業者は溢れ国家と国民は疲弊していった。とても対外戦争を行える力もなくゴルバチョフ大統領は、ついに資本主義との折り合いをつける決断をした。

 実際東西対立時代にソ連の傘下にあった東ヨーロッパ諸国に何度か訪れる機会があった。全般的に市街に明かりがなく薄暗く、街から元気な声も聞こえず、音楽が流れて来るような空気はなかった。ブルガリアでは、デパートの買い物でも品物をその場で買えず、決められた場所でしか品物を受け取れない不自由さや、東ドイツでは行くところ寄るところで、常に秘密警察に付きまとわれ行動を監視されているようで気持ちは落ち着かなかった。今顧みると少々懐かしい気もするが、人々は夢も希望もなく自らの未来に明かりが見えなかったのではないかと、それらの国を出国する時に彼らの夢は何だろうと同情したものである。

 しかし、ソ連から衣を変えた現在のロシアにも、国民は夢を抱いているのか。20年ばかり前にシベリア鉄道でシベリアを横断した時の途中駅でデッキに群がる物売りのおばさんたちの様子や、モスクワ市内の寒い野外で野宿をしている不良者の姿を思い出すと、プーチン大統領こそ権力を握って国民を叱咤しているが、権力欲と私利私欲で国民の気持ちを蔑ろにして、新生ロシアも旧ソ連から一歩も進歩していないように見える。

 つい最近ロシアの調査機関「世論基金」が公表した世論調査によると、国民の62%が「ソ連崩壊を残念に思う」と旧ソ連への郷愁を感じていると発表した。しかも10年前に比べて11%も増えている。あの自由も思想もがんじがらめだった旧ソ連時代がどうして懐かしいのだろう。多分当時の実情を知らないからだろう。懲りないロシア人である。ここにプーチンが独裁者になる下地が窺える。お~怖い!怖い!

2021年12月26日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com