5334.2021年12月19日(日) 企業の自衛策と自然災害防止策

 かつて日本の経済発展を象徴するマンモス企業と思われていた「東芝」が、身から出たサビとは言え、今では赤字会社に転落して悲運をかこっている。同じようにかつて繁栄した企業が、自らの力の劣化や時代の厳しい波を受けて落ちこぼれていく例も数限りなくある。

 ところが、今朝知ったタイヤ産業国内最大手の「ブリジストン」の大規模な事業再編には呆気に取られた。かつての名門企業の斜陽化現象とも言える。ブリジストンはタイヤ業界では、世界でも「ミシュラン」と並ぶトップ企業である。そのブリジストンが打ち出した会社再生策とは、労働現場の切り売りである。グループ全体で約14万人の全従業員のうち、2つの事業に従事する約8千人を売り渡した事業先へ転籍させて働き続けさせるという。表向きでは雇用は一応保証されているように見えるが、今後の売却先企業の経営政策次第では、そのまま社員として居続けることが出来るかどうかは分からない。転属させられる従業員にとっても、「ブリジストン」の名に憧れて入社した人も多いと思う。彼らにとっては、会社の都合で知らない会社へ派遣されるようなものだ。

 2つの事業部門の売却とは、ひとつは防振ゴム事業を中国企業に、他のひとつは自動車部品などの化成品ソリューション事業を投資ファンドに売却するということである。今回の事業売却に伴い工場の中には閉鎖する部門も出て来る。会社は、一昨年時点で国内外にあった約160か所の拠点を2023年までに4割方減らす方針だというから、例え切り売り事業部に所属しない従業員にとっても他人事として黙って見過ごすわけには行かないだろう。

 ブリジストンは、2020年12月期の決算で、コロナ禍による自動車の生産削減の影響もあり売上高が前期比▲15%、当期利益は実に69年ぶりの赤字となった。安定した雇用先だったブリジストンから突然の転籍要請に従業員のとまどいや不信感も募っている。当面待遇や雇用は保証されるにせよ、売却先企業の雇用下にあっては、必ずしも永久に維持される保証がないからである。会社の営業不振を会社の責任ではなく、従業員にしわ寄せされることへの焦燥感と不安があるようだ。今後これは会社内だけの問題で済むだろうか。或いは、温厚な社内労働組合が一波乱仕掛けることになるだろうか。「石橋財閥」も鼎の軽重を問われることになりそうな難しい問題である。

 さて、去る10日にアメリカ中西部、及び南部を巨大な竜巻が襲い90余名の人命を奪ったばかりだが、16日フィリピンでは台風22号が襲来し、セブ島で人家を損壊し住民に100名を超える犠牲を与えた。空中写真を見る限り平坦な土地で遮る壁がない。強風、豪雨が襲ったらひとたまりもないだろう。そうかと言ってこれらの平地を城塞のような防護壁で囲うようなことも出来ず、手の施しようがない。ただ、こういう自然災害の原因を突き止め、何とか防止策を講ずることが、最大の防護柵と言えよう。その意味では、これら2つの自然災害も二酸化炭素の排出による地球温暖化が招いたものと考えられている。近年盛り上がっている地球温暖化対策が、行い得る最大の自然災害防護柵であると言えるのではないだろうか。

2021年12月19日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com