5328.2021年12月13日(月) 国家独立を問う住民投票

 地球上には今以て宗主国と呼ばれる母国と、その属国となり植民地のまま現在に至っている国がある。アジア、アフリカ諸国は、長年列強国の支配下に置かれていた国が多かった。第2次世界大戦は、植民地解放戦争でもあった。戦後旧植民地が続々と独立し、今では植民地と言える国は稀となった。

 そんな中で、昨日地球上に残された旧植民地のひとつ、南太平洋のフランス領ニューカレドニアで、1853年にフランスが領有を宣言して以来、フランスからの独立是非を問う住民投票が実施された。ニューカレドニアは、一面で「天国に一番近い島」とも呼ばれている。独立については、フランスとの間で3回の独立を問う住民投票ができるとする協定が結ばれていて、今回が最後の住民投票である。2018年の第1回、昨年行われた第2回に引き続き独立反対派が勝利を収めた。しかし、その独立への動きは少しずつ独立派に有利になり、その差は僅差になっていた。今回実施された第3回住民投票では、どちらが勝利を収めるか、広く注目されていたが、昨日開票の結果は、意外にも圧倒的な大差で独立反対派が勝利した。

 これにはいくつかの要因があるようだが、独立派にとって最も決定的な敗北の原因となったのは、投票期日をめぐるフランス政府との対立から、独立派が多数投票ボイコットに回ったことだった。投票率は前回2020年の85%を大きく下回り、43%にまで落ちた。この結果、前回独立派が得た得票が48%だったにも拘わらず、今回は僅か3.51%に過ぎなかった。一方、独立反対派は96.49%の得票を得た。この結果、ニューカレドニアはフランスに留まることになった。マクロン大統領はこの結果を歓迎し、一方独立賛成派の指導者は今回の結果は認められないと述べている。

 もうひとつ大きな要因は、中国問題である。ニッケルの原産地でもあるニューカレドニアは、一帯一路で途上国へ進出し続けている中国にとっては、絶好のターゲットだった。しかし、フランス政府は、何とか住民の支持を得ることによって中国からの中国流経済進出を防ぐことが出来そうである。今後ニューカレドニア政府は、フランス政府と協力して経済発展に力を注がねばならないだろう。

 ところで、かつての先進国と発展途上国の間で繰り返されてきた、独立国家への脱皮が、思いがけず先進国家内にも燻っていた。

 イギリスとイギリス内の一部スコットランドの間で交わされていた国家分裂論争である。それは、去る5月に行われたスコットランドの議会選で、イギリスからの独立を掲げる地域政党・スコットランド民族党が勝利したのである。同党は、2014年に次いで近日2度目の住民投票を目指している。どこかニューカレドニアの住民投票と似ているところがあるが、歴史的な点で大きく異なる。実は、スコットランドは、1707年にイングランドと合併するまでは独立国だった。合併で独自の議会はなくなり、自治権と外交権は認められているが、自主権は大きく損なわれた。そこへイギリスのEUからの離脱により状況が大きく変わった。今後住民投票が実施され、スコットランドは新しい独立国家となるのだろうか。サッカー、ラグビーのようなスポーツ界では、以前からイングランドとは別にスコットランドというひとつの国の代表チームを送り出している。スコットランド独立の行方も注目していきたい。

2021年12月13日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com