5326.2021年12月11日(土) 日大事件の教訓

 日本大学が元理事による背任事件や、田中英寿前理事長の所得税法違反による逮捕などの不祥事で、世間から厳しい視線に晒されているが、ノー天気の大学本部は長い間記者会見を開いて大学の立場や考え方を伸べる機会を設けなかった。3年前のアメフト部の違反タックル問題の際も会見を開かなかった。その日大が昨日漸く記者会見を開いた。学長を兼務する加藤直人・新理事長が、冒頭謝罪したうえで、田中前理事長とは永久に決別すると決意を語った。先月田中前理事長が職を辞任すると述べた蔭では、田中氏は日大とのパイプを切らすことなく院政を敷いて、いずれ理事長に復活することを目指すだろうとの憶測があった。昨日の新理事長のコメントは、そういう声を抑えて、田中氏には今後「出入り御法度」を公に約束したのだ。田中氏の退任は、辞任ではなく解任としたことで、退職金も功労金も支払われないという。

 この一連の事件により、一番傷ついたのは現役学生たちである。学生たちに与えたショックと失望は計り知れないものがある。実際就活中の日大学生は、世間の日大のイメージ・ダウンを恐れ、就職に不利に響くのではないかと懸念している。偶々日大には危機管理学部という学部があるらしいが、在学生は入学前にはよもやこのような事態になろうとは想像も来なかっただろう。

 今回のスキャンダルによって日大は財政的にも大きな打撃を受けた。毎年日大には私学助成のための補助金として約90億円が支給されている。末松信介文科相は厳正に判断すると発言し、世間の目もあり、処分としては厳しいものとなるだろう。慣例によれば、一旦支給額がゼロとなり、その後徐々に復元され、5年後に元通りの支給額に戻るという。

 田中前理事長は、所得税法違反を問われた。しかし、収賄と見做される金額については、背任容疑で逮捕された理事が提供したと自白したにも拘らず、逮捕されても頑なにその受領を否定していたが、ついに本日になって現金受領を認めた。多額の現金が自宅内で見つかり、帯封を付されたままの現金束まで見つかり、夫人の携帯録音に受領したことに礼を述べ、夫が感謝しているという主旨を述べたことが分り、万事窮すと考えたのだろうか。

 疑問が多い今回の日大事件であるが、大学当局がガバナンスを失い、自浄作用もなく1人のワンマン経営者・田中英寿氏が権限を一手に掌握し、誰も理事長に反対意見を述べることが出来ないような怖い空気が漂う理事会だったことなどが、結果的に今日のあるまじき事態を招いた。

 理事全員を入れ替えて、一部外部理事を入れて本来の学園経営というものはどうあるべきか、と反省のうえに立って再生を期すより術はないと思う。ひとたび方針を誤ると、取り返しがつかなくなる点を真摯に反省し、新たな出発を期してもらいたいものである。

 学内に似たような病原を抱えた他の私立大学も、この日大事件を他山の石として私学の在り方というものを真剣に考え直して欲しいと思う。

2021年12月11日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com