5278.2021年10月24日(日) 都市の人口一極化と地方の過疎化

 都市の人口一極集中により大都会が益々肥大化し、その一方で地方都市が人口減少に陥り一層過疎化し、双方にそれぞれ悩ましい問題を提起している。特に、近年東京周辺では人口増加に拍車がかかり、首都圏直下型地震襲来の折には甚大な被害が発生することが予測され、危機感を高めている。

 政府はこの現象を放っておくわけにもいかず、5年前から地方に活性化を促すための政策に取り組み出した。「地方創生推進交付金」なる資金を投じて経済的に地方自治体を支援しようというのである。

 それでは実際どの程度都市と地方の間で人口乖離が発生しつつあるのかという点では、過去20年間に多少とも人口が増加したのは僅か9都府県だけなのに対して、10%以上も人口が減少した県は、14県もある。人口が増加したのは、沖縄、滋賀両県の他は、圧倒的に東京都及び首都圏3県、名古屋市のある愛知県、福岡県、大阪府で押し並べて大都市自治体である。一方人口減少県は、東北地方の秋田、青森、岩手、山形、福島県、四国の高知、徳島、愛媛県、九州の長崎、鹿児島県、中国地方の山口、島根県、そして和歌山県、新潟県である。

 政府は地方活性化を訴え、活性化政策も不十分ながら実施しているが、それでも都市人口集中化に歯止めがかからない。山崎幹根・北大教授は「政府が東京に人が集まる開発の旗を振りながら、移住を促す工夫を自治体に任せていては是正が進まない」と政府の方針に疑問を投げている。地方に工場や生産拠点がなく、農業も高齢者が増え、若者には魅力が薄れて地方を離れ、このままでは益々過疎化が進み、全国の過疎地域の中には、今後消滅の可能性があるところがかなりある。実際全国で約3,200か所の集落が消える可能性があると推定されている。

 幸か不幸か、新型コロナウィルスの感染拡大により、数多くの分野でテレ・ワークが行われるようになり、必ずしも大都市に居住しなければ仕事が出来ないと言えなくなった。この傾向を自治体によっては移住を支援することにより、人口減少に歯止めをかけているところもある。

 我々のような高齢者の中には、長年都市に住んで都会慣れして、反面今では生産性もなくなり、都市の効率的な環境と利便性に馴染んだが故に、これから地方へ移住することは考え難い。だが、都市に住む若者たちにとっては、自らの将来設計はどうしたら、より利便と発展のためになるのかとの視点から考えてみるのも、有益なことではないかと考える。

 それにしても東北地方の人口減少率が20年間で15~20%だったのに引き比べて、東京だけが飛び抜けて16%も増えている現状を考えると、コロナ禍の中で街を彷徨い歩く独り暮らしの若者が目立つのは、彼らがただ大都市に憧れているからだとか、都会には働ける機会が多いとの理由だけではないのではないか、別の問題があるような気がしてならない。

2021年10月24日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com