5266.2021年10月12日(火) 各党メチャメチャな財政支出案

 まだ読んでいないが、矢野康治・財務事務次官が「文藝春秋」11月号に寄稿した「財務次官モノ申す『このままでは国家財政が破綻する』」が、自民党内でいろいろ物議を醸し、財政ノーテンキ議員らから更迭論まで飛び出しているという。

 これは、財務次官が財務当局の責任者として、政治が担当官庁を差し置いて国家予算を一方的に決める手法強く批判したものでもある。特に「10万円の定額給付金のような形でお金をばらまいても、日本経済全体としては死蔵されるだけだ」と、新型コロナウィルス禍につけ込んで多額の財政支出をばらまくことを佳しとすることに警告したものだ。衆院選を前に選挙対策用に、財源のメドもなく安易に給付金をばらまく考えに異を唱えた正論だと思う。

 毎年国家財政の赤字が積み重なり、今や1,100兆円に上るとされる財政赤字額が、主に政治家たちの思惑と利己的な欲だけで、収入を上回る支出が続けられ赤字財政が今では恒常的となった。

 これまでにも財政再建を謳った政権もあったが、思ったようには黒字財政とはならなかった。それでも多少なりとも赤字財政が減少するなら良いが、今や赤字財政が当たり前と思い込んでいる政治家が多い。

 2年前にアメリカで話題になった経済論高校時代の友人が教えてくれた「MMT(Modern Monetary Theory)現代貨幣理論」というもので、現代経済学の主流とはまったく異なる考え方で異端とされていた。それは自国の通貨を持つ国は借金がどれだけ増えても返済に必要な分だけ、新たに通貨を発行出来るから破産しないという、常識的には考え難い考え方である。更に政府は借金の残高を気にせず、格差の是正や社会保障などにどんどんお金を使うべきだとまで主張している。だが、これはあくまで理論であり、実際に赤字幅が増えて国力以上に赤字が上回ったら、それこそ空理空論になりかねない。その実証検証行われたとも聞いていない。

 矢野氏は、近代経済学系の一橋大学を卒業された初の次官として、とてもMMTなどは評価していないと思う。数十兆円規模の経済対策や、財政収支黒字化凍結が主張され、衆院選を前に消費税の減税までも机上に上ったことに危機感を抱いたのではないだろうか。これらに対して、矢野次官は警告を込めて国庫には無尽蔵にお金があるかのような話ばかりだと批判した。経済同友会の桜田謙悟代表幹事も同じ考えで、過剰な財政支出には反対している。

 公明党が18歳以下の若者に一律10万円の給付金支給を選挙公約で主張したのをはじめ、各野党から子ども、若者、生活困窮者らに対する給付金の一律支給を打ち出した。この一方で、財源をどうするかということには、いずれの党からも前向きなアイディアが出てこない。これでは、日本は沈没するばかりではないか。

 この矢野氏の寄稿に対して、自民党政調会長である高市早苗氏が、大変失礼だと反論している。一昨日のNHK番組で「基礎的な財政収支に拘って本当に困っている方を助けない。未来を担う子供たちに投資しない。これほど馬鹿げた話はない」とまで非難しているが、高市氏の視点がおかしいのではないかと思う。高市氏は困っている方や、子どもたちへの助成に目を向けないと批判する1点だけに的を絞った極端な言い方で、過剰な財政支出抑制に反対している。高市氏の要望は、全体の予算作成の段階で考えるべき事柄であって、むしろそれを言うなら普段から財政出動に歯止めをかける考え方とか方針を主張すべきである。高市氏は防衛費を倍増すべきであるとか、聞こえの良い国民への支援金給付を言って自分の考えが国家財政を追い詰めていることに気が付いていない。高市氏の財布の紐は緩みっぱなしなのである。

 また、同時に国家財政の何たるかも分からず、8年10か月も財務相の地位に留まり、その間国の借金を2割も増加させた麻生太郎・前財務相の責任も重大である。

 高市氏の考えを聞いていたらいずれ日本は大借金国となり、破産への道を辿るだけである。岸田首相は文春をまだ読んでないようだが、読んでみて総裁選で支持を受けた高市氏の声に耳を傾けるだけではなく、矢野次官や財務省の言い分もよく考えて欲しいものだ。

2021年10月12日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com