5218.2021年8月25日(水) 日本ミヤンマー協会長の無思慮な言動

 一昨日の朝日朝刊紙上に3面に亘り、一般社団法人日本ミヤンマー協会・渡辺秀央会長とのインタビューと、クーデター及びミンアウンフライン軍司令官との交流を大きく取り上げていた。かつて郵政大臣を務め、自民党衆議院議員6期、参議院議員を2期経験したベテラン政治家なので、その名前はよく承知していた。しかし、あまりにも異常な言動には呆れている。それでも今も変わらず法人のトップとして政界で暗躍している。

 今話題のミヤンマーに関して日本との経済交流を促進する社団法人のトップとして自民党首脳陣と深い付き合いがあり、同時に見出しにも「国軍と話せる元議員」と書かれているほどミヤンマー国家首脳らとも交流が深い。アウンサンスーチー国家顧問とも交流があり、ミンアウンフライン国軍司令官ともクーデター以前から親しかったらしい。それは国軍の配下に軍御用達の企業があり、その企業へ法人を通して口利きをしたことによって日本政府が経済的に支援したからだろう。クーデター後にも渡辺会長はミヤンマーを訪問して何とミンアウンフライン司令官とも会談している。2人の親交は10年になるようだ。司令官と直接連絡が取れる日本人としては、他に笹川陽平。日本財団会長くらいだという。

 その渡辺会長とのインタビュー記事には、更に驚くばかりである。朝日がどうしてこのような保守的個人主義の渡辺会長に取材したのか、意図が読めない。実際ミヤンマーとの友好親善のために活動していたと強弁しているが、この法人を隠れ蓑に両国の大物と接触しながら自らの権力を巧みに行使して、自民党に手を貸して恩義を売っていたのではないかと考えざるを得ない。

 それにしても今後の対ミヤンマー外交政策について、日本政府や外務省の本音がよく分からない。外交上欧米諸国と口裏を合わせるように、国軍の行動を強く非難し経済制裁も辞さないフリを装っているが、別のルートではこの法人を通して国庫からミヤンマーに資金を投入している。これで国軍幹部に好い顔をしているというのが、実態ではないだろうか。実際、ミヤンマーが2012年に民政移管してから、ODAとしてミヤンマーへの円借款供与は約9千億円に上る。

 何よりも渡辺会長がインタビューで話された内容に驚いたのは次の点である。2月1日国軍が起こしたクーデターについて「クーデターではない。クーデターとは憲法や法律を否定し、全権を握ること。彼は『憲法と法律にのっとる』と宣言している」と司令官の言動を全面的に信頼し、正しい?と信じているのだ。この発言を誰が正しいと信じられるだろうか。ミンアウンフライン司令官の言動は、世界的に非難され、国際社会から制裁を受けている。今では世界の孤児となりつつある。日本の政治家でも彼の言を信じている者はほとんどいないと思う。日本政府にとって渡辺会長は困った時に都合好く利用出来る便利な存在なのではないか。これまで行ってきたことが、司令官らに便利で、利点もあったために親しい関係を続けているようだが、日本政府が国民を騙して都合好く二刀流を使い続けるなら、早晩他国に本心を見抜かれ、世界中から信頼されなくなる。

 それにしても司令官が、軍事力を使って政権を奪取したことを「憲法と法律に則る」としてクーデターではないと主張していることを、無批判に信じ込む渡辺会長の浅慮と単純な思考と判断をむしろ危ういと思う。利用する側も利用される側も、あまりにも無知と言わざるを得ない。懸念されることは、所詮国を預かる政治家というのが、この程度のレベルなのだろうかということである。

2021年8月25日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com