5209.2021年8月16日(月) アフガン政権崩壊、再びタリバン体制へ

 政治的にも社会的に不安定な状態が続いていたアフガニスタンで、ついに政権が崩壊した。イスラム系反政府武装組織タリバンが首都カブール郊外に進軍し、首都制圧を睨んでいたところへガニ大統領が昨日首都から国外へ脱出したことを受けて、何の抵抗もなく首都を制圧した。それにしてもタリバンの進出は素早かった。4月には数千人のアメリカ軍が残っていたが、その後アメリカ軍の完全撤退に向けた動きに合わせて5月には農村部を掌握し、6月から7月にかけて国境検問所を押さえて徐々に州都を制圧した。このままでは、アフガンはタリバンが近々国を支配するだろうと見られていた。アメリカは、同時多発テロ勃発は同じ国際テロ組織アルカイーダの仕業と睨み、その巣窟であるアフガン各地を空爆して、10年前には首謀者オサム・ビン・ラディンを殺害し、タリバンも都市部から追い払いアメリカ軍が20年間に亘ってアフガンに居座ることになった。だが、泥沼の戦いの中で兵士の犠牲や軍隊駐留費を無駄と考えたトランプ前大統領が、段階的撤退を進めることでタリバンと直接協議し、バイデン政権がこれを引き継いだ。

 幸いテロ事件も少しずつ減り、イスラム教徒としては女性に教育は不必要とか、女性の就労などに厳しい戒律は、世界的に非難され、タリバンとして多少歩み寄ったが、今後タリバンが政権を握るなら、イスラム世界文化が周辺諸国にも少なからず影響をもたらすだろう。

 それにしてもアメリカの利己的な政策によって、治安紊乱と無秩序を負の置き土産に中途半端なままアフガンを撤退するのは、あまりにも身勝手ではないか。

 2001年9月の9.11テロ発生とともにアメリカは軍隊を駐留し、10年後には11万余人もの兵士が駐留し、国内の治安確保と維持に当たって来たが、今年に入ってからは僅か650人の軍人しか駐留しなくなった。アメリカとしては注ぎ込んだ膨大な費用の割に、アフガン政府の後ろ盾としての得るべき効果が少なく、かつてソ連軍が侵入して一時的に勢力を伸ばしたが、あまりにも失うものが多く尻尾をまいて撤退したケースの二の舞となった。

 今後タリバンが支配するアフガン国内の政治的、社会的影響力が、どの程度国民に安心出来る生活を保障することが出来るだろうか。政治的に不安な国に介入しそうな中国が、今後どう出て来るだろうか。中国には新疆ウィグル地区のイスラム系ウィグル族に対する自由・民主化抑圧が国際的批判を浴びている折でもあり、迂闊な行動には出難い空気ではある。

 政権の交替や、国家の主導権の掌握のためには、選挙による民主的な方法が普通だが、近年は先のミヤンマー国軍による軍事クーデターのような手荒いケースもある。しかし、今回のアフガンのように反政府勢力が武力を示威しながらも、その一方で用意周到に軍閥に無血開城の話合いを仕掛けて時を稼ぎ、その間にガニ大統領が政権を放り出し夜逃げをするようなことが起きようとは、ついぞ知る由もなかった。テロの前年3月パキスタンとの国境・カイバル峠でパキスタン国境警備兵が監視し緊張する中をアフガニスタン・トルハム方面を遠望したが、あの荒涼とした環境と空気感を思うと感慨深いものがある。複雑な世界になったものだ。

2021年8月16日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com