5208.2021年8月15日(日) 信じられない特攻隊員9度の生還

 戦後76年の「終戦の日」を迎えた。しかし、本当に戦争は終わったのか、再び戦争が起きる心配はないのか、もしそうだとしたら「終戦の日」ではなく、「停戦の日」ではないかとの声を聞く。しばらく途絶えていた内閣閣僚の靖国神社への参拝も、昨日、今日の2日間あまり現実を真剣に考えない現、元閣僚が続々と参拝に出かけている。参拝者は決まって国のために尊い生命を捧げた戦没者に尊崇の念を捧げたと言うが、納められている戦没者の中にA級戦犯も含まれていることを知らないわけがない。その点をどう考えているのか。

 例年通り今日も日本武道館で天皇・皇后両陛下のご臨席の下に、菅首相、遺族らが参列して政府主催の全国戦没者追悼式が行われた。今年は新型コロナウィルスの感染拡大により緊急事態宣言下での開催となり、参列者はこれまでで最も少なく185人だった。4日ぶりに開催された甲子園の高校野球でも試合を一時中断して、選手、審判員、関係者らが1分間の黙祷を捧げた。

 テレビでも終戦に纏わる興味深い番組がいくつか放映された。そのひとつにテレビ朝日「ラストメッセージ ‘不死身の特攻兵’  佐々木友次伍長」と題する心の中に思い当たるドキュメントがあった。原本は高木俊朗著「陸軍特別攻撃隊」で、度々当時のビルマ(現ミヤンマー)を訪れていた1970年代に、戦時中読売新聞ビルマ特派員だった鈴木英次さんから友人が書いた本だが、面白いから読んでみたら好いと勧められ読了したドキュメントである。同書を読み終えた時、人間性を否定するこのような残酷なことが実際に行われていたのか、と衝撃を受けたドキュメントである。

 テレビでは極力事実に則って、主人公佐々木伍長が軍の規範に逆らって生き延びた人生模様をリアルに描き出していた。特別攻撃隊万朶隊員・佐々木伍長は、フィリピンでアメリカ軍への特攻のため何度も基地から離陸するが、その都度何らかの止む無きトラブルにより帰還する。一度特攻兵に指名されたら、御国のために一身を賭して敵を倒すとの決意で飛び立った筈だが、佐々木伍長は1度ならず、9度も引き返してきた。神兵として国からも地元でも名誉の戦死をしたと神に祭り上げられ、地元の新聞には慰霊に訪れる地元民の前で遺影を抱える両親の写真まで掲載された。だが、息子が生存している話を耳にした両親は、堪らず涙を堪えて早く戦死するよう息子に伝えたという悲劇である。陸軍としては伍長のような生き残り兵がいることは不名誉でもあり、もう帰ってくるな、早く死ねと言わんばかりのプレッシャーをかけ続けていたという。

 こういう特攻隊生き残りストーリーは実際にはほとんどなく、戦後除隊した伍長は故郷の北海道に戻ってからどんな気持ちで、周囲の人びとと接しただろうか。これも戦争が個人に与えた罪悪である。その佐々木伍長は5年前87歳でこの世を去ったが、長い間自らの戦争体験については、家族にもほとんど語らなかったそうだが、晩年になってこのドキュメントのようにテレビの取材にも応じるようになった。本心を隠して秘密を抱えたまま冥界へ旅立つのに、心残りと躊躇する気持ちがあったのではないかと推測出来る。佐々木伍長も哀れな戦争の犠牲者である。

2021年8月15日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com