5200.2021年8月7日(土) アメリカ駐留軍がアフガンから撤退

 ニューヨーク同時多発テロが勃発してから来月には、早や20年になる。テロ直後に「目には目を」とばかり、激高した当時のジョージ・ブッシュ大統領がアフガニスタンのタリバンの巣窟へ攻撃を仕掛けてアフガン戦争が始まった。アフガニスタンは現在多少落ち着いて来たとは言え、未だ政情は不安定である。国内各地にタリバンが網の目のように拠点を築いている。テロの前年にパキスタンとの国境カイバル峠に立ち眺めたトルハム方面にも出没しているのかもしれない。だが、アメリカがアフガニスタンへ軍隊を派遣して20年が経過し、アメリカ国民の間にも疲労気味で軍隊撤退の声が出ていた折に、バイデン大統領は今月中にすべての駐留米軍を撤収すると公表した。そして7月2日未明駐留米軍の最大の拠点だった首都カブール近郊の空軍基地から、米軍が完全に撤退した。アフガニスタン政府に撤退の時間を知らせていなかったため、アフガン軍高官の間では、まるで夜逃げではないかと皮肉られている始末である。

 翻ってアメリカのアフガニスタンにおける駐留、統治は、万事うまく行われたのかどうかは極めて疑問が残る。それはすべてアメリカのやり方で実施されていたことでも分る。確かにアルカイダ一派のテロによってニューヨーク、及びワシントンD.C.が襲撃されたことは事実であるが、その後のアメリカのアフガニスタンへの対応は自国のためのリベンジだけの報復と支配であり、アフガニスタンの国民のためには何のプラスももたらさなかった。

 アメリカの撤退理由として、アフガニスタンが安定した国情を取り戻したということが言われているが、反ってタリバンらテロ組織が力を取り戻し、軍事力においてもアフガン正規軍を凌ぐほどである。また、彼らの復権が周辺の中国のみならず、一時侵攻したロシアにも危機意識を呼び起こしている。市民レベルの視点から最も気になるのは、米軍撤退により長年に亘り米軍のために協力していながら、タリバンから国家の裏切り者、或いはアメリカのスパイと見做されているアフガン人通訳をはじめとする、米軍基地労働者らの身の安全である。この点を危惧したアメリカ政府は、希望者には特別移民ビザの許可を与えると伝えた。ところが、短期間、或いは一時的に米軍への協力者だったアフガン人には、その処遇はない。彼らは一時的とは言え、アメリカのために働いた。それにも拘らず、その恩恵を受けることが出来ず、その不満の声にアメリカも苦悩し対応を考えていた。このほどアメリカ政府はこれらのアフガン人に対して新たに難民として受け入れる方針を発表した。

 しかし、これで問題が解決したわけではない。アフガン国内には新たな問題が起きつつある。タリバンに比べて、すべての面で心許なさを感じるアフガニスタン政府が、これからアメリカの支援なしに国内の治安を維持し統治出来るだろうか。それにしても利己的にアフガン国内へ入り込み、国内の安全のためと称して政治、社会的に影響を及ぼし、自国の判断で後事を頼り甲斐のないアフガン政府に委ねて軍隊を撤収させて引き上げるという、身勝手さには微力なアフガンが哀れに思われる。これを現代流の他国への干渉・支配の見本と言ったら好いだろうか。

2021年8月7日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com