5160.2021年6月28日(月) 中国から理性と民主主義は消滅した。

 去る24日、香港で26年間発行されていた「リンゴ日報」紙が廃刊となった。創刊以来中国政府に対して批判的な論調を展開していた同紙に対する中国政府の強硬な締め付けの結果である。ここにまた香港の自由と民主主義が死んだ。イギリスとの香港返還時の約束である「1国2制度」を一方的に破棄し、香港人の自由と言論をはじめ、手当たり次第に民主主義を奪い取っている中国の暴力である。国家間の約束を破るのが中国流なら、市井のあらゆる事象を全て中国流に変えさせるというのも習近平・国家主席の目指すところだろう。「1国2制度」が施行されて折り返し点に到達する前に中国的「1国1制度」に変えてしまうのは、その時が来るまで待てないという68歳になったばかりの習近平の焦りからだろう。

 昨年6月香港国家安全維持法の施行に伴って、中国に反対する言動はすべて反中国的と見做され罰せられることになった。それを具体的に香港で監視するために、いつの間にか中国は香港政府の上部機関として高層ビル1棟内に丸ごと国家安全維持公署を設置し、直接香港警察を管理下に置いた。現在の香港行政府ではこの香港を中国の思うように管理出来ないと見切りをつけたものだ。国家安全維持公署トップの実質的な影響力は、林鄭月娥・香港行政長官を上回る。300余名の職員は、本土の公安省とスパイを摘発する国家安全省から派遣され、香港のホテルを借り上げて宿泊している。彼らは身分証明書を所持しているが、国家安全維持法の下で業務に携わっている間は香港当局から調べられるようなことはなく、事実上の治外法権を与えられている。

 今年度の香港政府の予算案に国歌安全維持の名目で約1,130億円の予算が計上されたが、これは国家安全維持公署職員の給与に充てられるのではないかと見られている。今や香港は完全に中国の思うままに押さえつけられ、グーの音も出ない状態である。

 中国の民主化抑圧と人権侵害は、新疆ウィグル族やチベット族など少数民族に対する仕打ちでも、かねてより欧米をはじめ国際社会から厳しく非難されている。加えて南シナ海への海上進出など力ずくの覇権国家ぶり周辺諸国の不安と懐疑を生ませる一方で、中国は増長するばかりである。それを中国は利己主義的に自らを正当化し、他者を排除する。そのベースとなったのは、中国共産党1党独裁支配による唯我独尊的なパフォーマンスのせいである。最も非民主的な点は、世界最多の人口を抱えながら、国民に自由選挙権を与えず、彼らに自由と言論の権利である選挙による個人の意思表示を認めないことである。すべての善悪を共産党が決定する。こんな非民主主義的にして、非現代的なことをいつまでやっているのだろうか。良識ある中国人がその不条理に異を唱えないのが不思議でならない。

 しかし、これほど世界中の民主派や良識ある人々を敵に回してまで、中国が香港で暴力的行動を唐突に起こしたのには2つの理由がある。ひとつは、7月1日に中国共産党が結党百年を迎える祝典の前に香港を完全に中国化・「1国1制度」化しておきたかったからである。2つ目は、習近平主席が中国全土を政治的に、歴史的、文化的に統一したことを世界に宣伝したかったからである。だが、外部の意見を一切聞き入れず、独善的な政治がそういつまでも続くことはとても考えられない。かつてのドイツ・ヒットラーや、ソ連のスターリン絶対君主制はあっという間に崩壊した。習近平の隙がなく一見綻びが見えない絶対体制でも、いずれ内外からの力によって突然瓦解することははっきりしている。これを習近平一派はどう考えているのか知りたいものである。

2021年6月28日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com