5156.2021年6月24日(木) 「知の巨人」立花隆氏の死を惜しむ。

 昨日著名なジャーナリストの訃報が伝えられた。亡くなられたのは、「知の巨人」と呼ばれた立花隆氏である。死因は急性冠症候群だった。執筆家であると同時に幅広い読書家としても知られ、3万冊読んで百冊書いたと言われるほどだった。何と言っても立花隆の名を世に知らしめたのは、金脈問題を追及して田中角栄元首相を辞職に追い詰めた力作「田中角栄研究」であろう。ジャーナリストとして鋭い切れ味で切り込むペンには多くの読者から喝采を博した。私もそのひとりで、特に手元にある「同時代ノート」(講談社刊)は、各新聞、週刊誌などに掲載された批判的な時事エッセイ、評論などをまとめたものだが、それぞれに鋭敏な分析と視点が表れている。2007年に購入、通読した書だが、裏表紙に一言コメントとして「中々コクがあって面白い」と書いてある。舌鋒鋭く切れ込んだ政治評論は生々しく新鮮で、抜群に興味深かった。

 立花氏が森羅万象何ごとにも興味を抱くのは、向上心と好奇心、読書のおかげだろうと想像するが、何ごとに対しても身を賭してトライする前向き精神があるからだと思う。自身「山ほどの好奇心を抱えて、その好奇心に導かれるままに仕事をしてきた」と述べているほどひたすら信じる道を歩いて来た。東大仏文科を卒業し、文芸春秋社に2年余り勤務の後、東大哲学科に学士入学した後、ヨーロッパや中東を放浪して日本赤軍のテルアビブ空港銃乱射事件に遭遇し、そこで岡本公三に取材してジャーナリストとして出直したというから、奇遇にも恵まれたともいうべきであろう。新宿ゴールデン街でバーを始めるようなことまでして社会の底辺を覗いたこともあったという。

 同じ政治評論家の田原総一郎氏がその死を惜しんでいる。とかく取材先の政治家に忖度して厳しい記事を書こうとしないジャーナリストの中で、立花氏は思うところをズバズバと書いてその存在感を高めていた。出来れば、今話題になっている森友学園財務省決済文書改ざん問題で一連の事実関係と自決した元財務省職員の赤木ファイルについて、立花流の鋭いレポートを読んでみたかった。森友への国有地の大幅な値引き払い下げで、安倍前首相の関与と佐川元理財局長の虚偽答弁、その後佐川氏が交渉記録は廃棄したとの発言、文書改ざんなど、一向に当事者が真実を語らず、赤木ファイルには事実が記載されているにも拘わらず、彼らは認めようともしない。この不条理な事件は、管轄部署の麻生財務大臣、佐川元局長らが責任上処罰されて然るべきである。元気だったころの立花氏の鋭い追及ぶりを知りたかった。

 こういう気骨のあるジャーナリストは、今後もう現れないのではないかと彼の死を惜別する想いである。享年80歳だった。立花隆氏のご冥福を心よりお祈りしたい。   合掌

2021年6月24日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com