5129.2021年5月28日(金) シリアで独裁者アサド大統領4選

 9都道府県に出されている新型コロナウィルス拡大防止のための緊急事態宣言は、今月末が期限となる。大都市圏では少し感染者は減っているが、地方都市では一向に衰える気配がない。9つの自治体では、更に緊急事態宣言の延長を要請していたが、今日来月20日までの期限延長が決まった。まだ当分の間コロナには振り回されそうだ。

 さて、アラブでも内戦の絶えないシリアで大統領選が行われ、昨日独裁者パッシャール・アル・アサド大統領が圧勝した。クルド人が多く住み、宗教的にはイスラム教が浸透しているが、その中でクルド人武装勢力とイスラム過激派、更にトルコ人が入り込んで国内は複雑な様相を呈している。

 今回の選挙でも選挙前からアサド大統領の勝利は確実視されていた。すでに21年間に亘って大統領の地位にあるアサド氏は、父親のハーフィス・アル・アサド大統領が29年間大統領を務め、父が客死後1年間別人が大統領職にあったが、その後は息子が引き継いできたので、シリアの政治はアサド家によって支配されている構図となっている。

 剛腕ぶりと弾圧で、反対勢力を追放し、アサド大統領は今や国内では盤石の基盤が出来ている。一応総選挙によって民意を背景に統治の正統性を内外に示した形ではあるが、非民主的であることは予想通りで、今回の選挙でも当初51人が立候補を届け出た。しかし、認められたのはアサド氏と知名度の劣る2人だけで、反体制派は除外された。これに対して、英仏独伊の外相らは、共同声明を発表し、「自由でも公平でもない。詐欺的な選挙は内戦の政治的解決に向けたいかなる進歩も意味しない」と非難している。これに対してアサド政権を支持するロシアやイランは、内政干渉は受け入れられないと選挙の正当性を主張している。気に入らない候補者を締め出した選挙に何の正当性があるというのだろうか。ロシアももう少し真っ当な言動をしてはどうか。

 シリアでは、2011年にエジプトで起きた「アラブの春」に同調した反政府デモに対して徹底的に弾圧した。このことから内戦が始まった。政権にロシアが軍事介入し、政権側が失地を回復して軍事的優位を固め、ロシアの影響、介入も強まった。だが、内戦の結果市民生活は困窮を極め、内戦と外国からの経済制裁によって、人口は在外者も含めて約1,800万人の内、その6割が食料支援を必要としているのが実情である。こういう劣悪な生活環境と内戦、そして最近ではコロナに苦悩していながらシリア国民を救う手立てを示せないのが長期政権を築いてきたアサド大統領である。考え方によっては北朝鮮の金正恩・朝鮮共産党委員長より質が悪い。それでいながら、アサド氏の大統領選における得票率は、実に95.1%だという。7年前の得票率88.7%より更に6.4%上がったというから信じられない。今後7年間を再びアサド氏が政権を担うことによってシリアの人びとはどれだけ幸せになれるというのだろうか。欧米の批判に対してアサド大統領は、彼らの言い分の価値はゼロだと言い返したようだから、シリアという国には、民主主義、公平、言論の自由なんかはまったくない。これを支援しているロシアと中国、イランも同じ穴のむじなと言うべきだろうか。気の毒なのは、アサド大統領に国民を思う気持ちがないことを半世紀に亘って見せつけられてきたシリア国民である。

2021年5月28日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com