5127.2021年5月26日(水) アメリカで増える一方、解決出来ない銃撃殺人事件

 昨日はアメリカのミネアポリス近郊で黒人ジョージ・フロイドさんが白人警察官から首を圧迫されて死亡してからちょうど1年になった。テレビで現場の画像を観ていると不意にパンパンと銃撃の音がして、現場で生中継していたレポーターが慌てて逃げるシーンが映った。相も変わらない銃社会である。バイデン大統領は、「彼の殺害は1960年代の公民権運動以来の『抗議の夏』を生みだし、すべての人種と世代の人びとを平和的にひとつにした」との声明を発表した。大統領はフロイドさんの命日までに、警察改革などを実現させたいと語っていたが、昨日まで法案は未だ成立していない。

 警察改革法案が例え成立してもそう簡単にアメリカ社会に銃を規制することや、黒人を抑圧する空気がなくなるとは思えない。それは、アメリカ社会には世界的に珍しいほど自由な銃所持が認められていることである。銃さえ持ちその気になれば、気に入らない人を簡単に殺害出来る。実際に昨年以降アメリカでは銃による殺人事件が激増しているという。今年になってから銃乱射による大量殺害が全米各地で起きている。昨年の殺人事件の被害者は2万人を超えるそうで、一昨年の25%も増加している。殺人の9割以上は銃による射殺である。

 銃規制を厳しく行い、銃所持を国として認めない方針を決めさえすれば、残念な殺人事件は大幅に減少する。この点については、私自身もこれまで本欄で強く主張してきた。21世紀の近代社会になって今も西部開拓時代と同じように銃によって物事の決着をつけるとは、あまりにも時代錯誤的で世界の笑い者である。しかしながら、銃規制に反対するアメリカ・ライフル協会の政治力によって残念ながら銃規制には反対が強い。実際に現場では、銃の売買がうなぎ登りに増えている。アメリカ人の銃保有者はコロナ前で3億丁と言われていた。3億2千万人の全国民が、ひとり1丁は所有していることになる。それが、コロナ感染拡大後は1年足らずの間に15%も増えたという。これだけの個人所有の銃を一気に減らすのは、難しいと思う。だが、だからと言ってこのまま銃保有を放置したら銃による殺人事件がなくなる可能性は皆無である。トランプ前大統領には、銃規制の考えはまったくなかったが、オバマ元大統領やバイデン大統領のような民主党政治家の間では、何とか銃規制に手をつけようとしている。それでもまだ具体的な行動にはなっていない。民主主義の国と言われるアメリカには、情けないことに最も残虐な殺害事件を起こして、それを誰も止められない現実がある。怖いのは、昨年から少し様子が変わり、無差別殺人の矛先が「アジア系への暴力」とか、「ヘイトクライム」へ向けられるようになったことである。単なる殺人から差別へターゲットが変わりつつあることである。

 「選択」本年5月号によるとアメリカ国内の銃購入は、今年第1四半期は前年同期比で10%以上増えている。驚くのは、シアトル、ニューオーリンズ、アトランタ、シカゴ、ボストン、ポートランドの6都市では、昨年の殺人事件が前年比で50%以上増加したことである。世界最悪のコロナ死者数60万人を生んだことより銃犯罪の方がよほど怖いというアメリカ人が多い。他の世界の国々より巷に危険が転がっている現状をどうして解決へ向け前進させることが出来ないのだろうか。アメリカにとっては最も恥ずべき汚点である。

2021年5月26日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com