5126.2021年5月25日(火) 明治憲法制定前の五日市憲法草案

 こんな山奥の辺鄙な土地、しかも東京都内にある今にも朽ち果てようとしている茅屋に、大日本帝国憲法の制定以前に憲法私案のひとつが作られ、残されているのが今から半世紀前に見つかった。俗に「五日市憲法草案」と呼ばれている。起草されたのは1881年で、発見されたのは大分時を経て1968年、江戸時代の名主の屋敷内の土蔵だった。起草者は仙台藩士の子孫で、戊辰戦争で敗北の末遍歴を重ねて五日市町(現あきる野市)へ辿り着き、小学校で教員をしながら自由民権運動に携わっていた千葉卓三郎という人物である。

 草案は204条から構成されているが、その主題は「日本国民ハ各自ノ権利自由ヲ達ス可シ他ヨリ妨害ス可ラス且国宝之ヲ保護ス可シ」と書かれている。国民の権利に多くを割き、身体・生命・財産の保護や思想・出版の自由、地方分権などを盛り込んだ極めて民主的な内容と評価されている。当時ではとても考えられないような民主的な草案であり、例え明治憲法には採用されずとも、こういう自由で民主的な空気が人里離れた山奥にあったということに興味を惹かれた。いかにその当時このような土地に開明的な人々が多く住んでいたことかが推察出来る。

 百を超えるとも言われる明治時代の民間憲法草案の中でも五日市憲法草案は、自由と人権という点で最高の内容であるとも評価されている。今日では、「五日市憲法草案の会」という組織が結成され、草案を日本の宝として広めようと活動している。世間一般には、あまり知られていないこのような山深い土地にかくも民主的でアカデミックな歴史が芽生えたということに驚いている。いつかこの地を訪れ、保守的な明治憲法とはやや相容れない民間の憲法草案が生れた空気に触れてみたいものである。

 さて、唐突にアメリカ国務省は日本の新型コロナウィルス感染状況を4段階の内最高の「レベル4」に格付けして日本への渡航を中止するよう求めた。国務省の渡航勧告は、渡航中止勧告の「レベル4」には、ドイツ、フランス、ブラジル、ロシアなど151カ国が含まれ、渡航再検討の「レベル3」には、イギリス、オーストラリア、イスラエル、中国など42カ国が、注意の「レべル2」は、韓国、シンガポール、ベトナムなど16カ国が含まれている。

 アメリカのこの種の警戒度については、かねがね疑問を抱いていた。世界で最も感染者と死者が多く、慌てて国民が嫌なマスクを着けるようになりワクチン接種効果が表れ新規感染者数が減少した途端公的にマスクを着ける必要がないと言い、ソーシャル・ディスタンスも取らず、自由にハグをしている図を見ているともう少し慎重であるべきではないかと思っていた。それが日本への渡航にまで制限を加えるようになるとは、アメリカ人のコロナ意識が常識的な感覚とは些かずれているのではないかとも思っている。これは国民性であろうか。

2021年5月25日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com