5056.2021年3月16日(火) 大企業がエゴで中小企業化するとは?

 新型コロナウィルスの影響を受け、どの企業も四苦八苦している中で「こんな手もありか?」と首を傾げさせたエゴ的奥の手があった。大企業の中小企業化である。具体的には資本金を大企業・中小企業の境界点であるでこの問題が1億円以下に減資することである。これを先月経営面で苦境に立っていた毎日新聞社と旅行大手のJTBがやってのけたのである。それぞれの減資が公表された時、一体どういうことかと気になってはいた。

 そんな折も折、「週刊現代」3月20日・27日号が発売された。同誌に「JTBと毎日新聞『減資』という名の『税逃れ』を考える」とのテーマでこの問題が取り上げられた。「ルールの穴を突けば、大企業は『中小企業』の看板を掲げるだけで、税法上の優遇を受けられる」とある。どういうことかと言うと、法人事業税のひとつで人件費などを基準に算出される「外形標準課税」が中小企業には課せられない。この恩恵により中小企業になるJTBは、今期約12億円の税金を支払わなくて済むことになる。23億円から1億円に減資された資本金は、資本剰余金に振り替えられ、経営が悪化した際の欠損補填などに充てられる。体の好い準備金のようなものである。しかし、一種の禁じ手と言えないこともない。同じように毎日新聞社が41憶5千万円の資本金を1億円に減資して立派な中小企業に衣替えした。竹橋にあんな大きな自社ビルを持ちながらである。しかし、毎日の場合は、このコロナのせいばかりではなく、今や恒常的な赤字企業に落ちぶれていた。2年前消費税導入の際には、社会の公器を主張して軽減税率の対象となった。公器を自称して優遇措置を得ていながら、自社の経営が苦しいとなるといとも安易に減資を行い節税する姿勢には、誰しも違和感を覚える。

 ところが、JTB、毎日ともにあまりいじける気持ちも悪びれる気持ちもないようだ。田川博己・JTB前会長は生き残るためには何だってやると勇ましい。朝比奈豊・毎日新聞前会長は、減資は大した問題ではないと言い切っている。ある経済ジャーナリストは、「大企業が中小企業化し、あからさまに節税するのは『公』に対する責任を放棄する行為と見做される」と警告している。仮に今年度赤字に陥ったJR、及び大手鉄道会社がすべて1億円に減資したら、入るべき国家歳入が消えてしまい日本の財政にとってどれほどマイナスかと考えると、これで良いのかと言いたくなる。手の届くところに美味しいものがあるからと、誰も彼もが取って食べてしまっては、お金もモラルもなくなり、お金亡者だけが蔓延る社会になってしまうのではないだろうか。せめて大企業の経営者は、社会への責任というものを自覚して、もう少し毅然と本業に打ち込む努力を忘れてはならないのではないだろうか。

2021年3月16日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com