5012.2021年1月31日(日) イギリスが行った香港市民への支援策

 新疆ウィグル地区とチベット自治区における少数民族に対する中国人民政府の抑圧が大きな問題を提起しているが、一昨年来香港の自治も危うくなってきた。特に昨年香港において国家安全維持法が施行されて以来、香港において保障された1国2制度が有名無実化され香港の自治が危機に瀕している。

 その最中に香港の旧宗主国だったイギリスが、香港からの移民を受け入れる特別ビザの申請受付を始めるという。そもそも問題の発端は、中国が香港返還の際イギリスに返還後50年間は1国2制度を遵守するとの約束を一方的に反故にしたことにある。イギリスはその時点で中国政府に約束違反であると強く抗議すべきだった。それをあまり強い態度にも出ず、この期に及んでイギリスは香港に居住していると自由が脅かされると感じる香港人の支援に乗り出したのだ。

 しかし、イギリスがこれまで世界の植民地で行った植民地政策、とりわけ分割統治は、決してその国の人びとと宥和するようなものではなく、逆に痛めつける非道なものだった。それが今では中国に対して理不尽だと叫んでいるが、かつての大英帝国時代に犯した自らの罪にてらしてみると好い。自らの残像とも言えるものである。

 このほど上梓した拙著「八十冒険爺の言いたい放題」にも過去のイギリスの罪について触れている。アデンにおける植民地政策とロヒンギャ族発生の原因である。特に後者はイギリスが強制的にロヒンギャ族を現バングラデッシュ領からミヤンマー領内へ移住させたことが遠因である。その点についてイギリスは、これまでまったく責任を取ろうとしていない。その他にも私自身がイギリス政府から受けた無責任な所業を書いた。私が受けた無責任な所業とは、植民地アデン(現イエメン)のビザを東京の駐日イギリス大使館で発給してもらったが、その僅か1週間後にアデンは独立した。そのため私はそのビザではアデンへ入国出来なかった。大使館は当然独立について承知していた筈で、無効となると分かっていながら私にビザを発給した。結局役に立たないビザの代金を支払わされた。国家ぐるみの詐欺とも言える。

 イギリスは、自ら蒔いた種を刈り取る気持ちがないばかりか、相手国民が大迷惑を蒙っても無視するのはイギリス流儀のやり方である。果たして、香港の人びとがイギリスに当面居住を許されたところでどこまで心底から彼らを支援してくれるだろうか。

 それにつけてもそれ以上に非民主的なのは、中国である。イギリスが香港市民を受け入れるとの行為に対して、中国政府は厚顔にも「主権侵害」と反発を強めているが、香港市民の自由と自治の権利を侵しているのは、間違いなく中国政府ではないか。中国政府はきれいごとで一見辻褄が合っているようなことを叫ぶが、よくよく注意してみると自らが他国の自治を侵害しているのだ。

 こういう民主とか、自治の自由について、取り敢えず現状では侵害されない我々日本人は香港市民に比べて幸せというべきだろうか。

2021年1月31日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com