4916.2020年10月27日(火) タイのデモと国王のスキャンダル

 初めて訪れた外国であり、好きな国のひとつでもあるタイ国内の反政府デモが激しさを加えている。官憲によりデモ隊が抑圧、排除されては、再びデモが活発化して一向にその勢いは止む気配がない。日ごろ温厚なタイ人がこれほど騒ぐのも珍しい。去る8月には、抗議デモは過去最大級のものになり、プラユット現政権を追認しているとして、タブーである国王批判と王政改革まで要求するまでになった。

 タイには世界でも珍しい王室に対する不敬罪なるものがあり、国王や王室を批判することは重大な犯罪として取り締まりの対象となっているとは、つい最近まで知らなかった。実際タイの憲法には、「国王は崇拝される地位につき、それは侵害されてはならない。何人たりとも国王に対していかなる非難も行動もしてはならない」と規定されているから驚くではないか。刑法でも「国王や王妃、後継者や摂政を中傷したり、侮辱したり、脅迫する」ことは犯罪で、禁固刑に処せられることもあるとされている。これは外国人メディアに対しても同様で、仮に反王室と見られる記事が報道されると処罰の対象になるとしてメディアが委縮する傾向があるという。それが公に反王室の報道が見られなかった一因でもあったのだ。

 ところが、国王、及び王室関係の人たちの言動は、憲法が保障するほど胸を張れるような模範的なものかというとまるで真逆なのだ。これまでにもスキャンダラスな話はしばしばあったが情報として伝えられなかっただけなのだ。ラマ9世を名乗ったプミポン前国王は70年間在位して国民から広く敬愛されていたようだったが、子息の今年68歳になるワチラロンコン現国王は、王室で国事を執務しているかと思いきや、プレーボーイとして浮名を流しタイを留守にしがちでほとんどドイツのホテルに20人の愛人と生活しているという。前国王が亡くなって3年後の昨年漸く戴冠式が行われ正式にラマ10世となったが、戴冠式に約35億円を費やしたとして派手な話題にもなった。これまでに3度も離婚を繰り返し、現在1世紀ぶりの国王側室から格上げされた王妃と4度目の結婚生活を送っている。

 しかし、国王ともあろう国民から敬愛されるべき方が、外国で多くの人びとから注視される中で上半身を女性用タンクトップでGパンにサンダル、加えて上半身をペイントで塗って、入れ墨風に装った裸姿は、あまりにも非常識で良識ある人々の顰蹙を買ったことと思う。普通のタイ人の言うに言われぬ気持ちがよく分かる。周囲からは諫めるお側役がいないせいか、国王には襟を正すという気持ちが見られないようだ。

 8月に起きたデモの中で、国王の行為に呆れた弁護士が中心となったものがあった。弁護士は不敬罪により身柄を拘束されたが、後に解放された。しかし、恐らくこのままではどちらも済まないだろう。国辱ものの国王と国王の行為は、タイ国民にとってもいかに憲法で保証されていようとも、いつまでも見過ごすことは出来ないだろう。政治的な反政府デモと王室批判デモが一緒くたになっているが、どちらかのカタがついたとしても、例え違憲であっても王室批判、王室体制変換への動きは芽を吹き出し拡大していくのではないだろうか。

 初めてタイを訪れ、そこで短いながらも古都アユタヤで軍人のスナイさん家族に温かいおもてなしを受けて楽しい旅を送って、新婚旅行でも再訪した大好きなタイが、こんな国王のスキャンダラスな話で国内外の評判を落すのは何とも悲しく残念なことである。

 日本のメディアには、王室関係のニュースが駐日タイ大使館に監視されていることにおびえることなく、正々堂々とせめて真実を伝えて欲しいものである。それはそれとしてこのブログを仮にタイ大使館が知ったら不敬罪に当たるのだろうか。

2020年10月27日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com