4914.2020年10月25日(日) 核兵器禁止条約50カ国が批准・発効、日本批准せず。

 昨日に続いて朝日朝刊に連載中の池澤夏樹の「また会う日まで」について雑感を手短に書いてみる。ここ数日の海軍高官の言動描写に興味を抱いた。時は日ロ戦争前後である。主人公の海軍士官が海軍艦隊演習航海でアメリカやヨーロッパを巡った当時の航海記録に興味を抱いた。特にロシア軍艦が地中海で日本軍艦にちょっかいを出し一触即発のときに、日本に好意的だったイギリス軍艦の先導でスエズ運河へ入り、スエズから紅海を通りアデンを経てアラビア海に出るルートを航海するシーンを描いていた。偶々近日上梓するドキュメント「八十冒険爺の言いたい放題」で、第3次中東戦争直後に戒厳令下のスエズ運河へ行き、その後アフリカを回ってビザを持っていながらアデンで入国を拒否され、何とかして滞在ビザを取得して日本人として初めて独立したばかりの南イエメン(アデン)へ入国した旅行について頁を割いている。そんなことを思い出し頷きながら読んでいた。今では運河も拡張されたが、砂漠の中を波ひとつない公海上をすべるように進むイメージが頭の中に浮かんでくる。

 さて、昨日核兵器の保有や使用などを禁止する核兵器禁止条約をホンジュラスが批准して批准国が50カ国になり、国際条約として来年1月に発効することになった。しかし、これに参加していないアメリカ、ロシア、中国などの核保有国には条約の効力が及ばず、実効性には課題が残る。また、アメリカの「核の傘」に依存する日本も条約に参加していない。世界で唯一の被爆国であり率先して批准すべき日本が条約を批准しないことに関しては、条約批准国から不審な目で見られている。

 安倍政権時代から日本は、核保有国と非保有国の間の橋渡しをするという極めて曖昧で無責任な立場に固執し続けている。今回条約批准国が50カ国に達したことにより非核化の動きが加速することを期待したい。

 しかし、最近アメリカが批准国に圧力を強めて批准を取り消すよう求めていた。核戦争を望んでいるのかのようなアメリカは、これにより非核運動が世界的に大きく拡大することにブレーキをかけたようだ。日本はアメリカの核の傘の下に入ることによって、アメリカ側に就いている。これが被爆国の行き方だろうか。これにより自らの手を汚すこともなく核兵器使用を許容していることになり、極めて中途半端な立場にいる。これは倫理的にも問題で、無責任過ぎやしないだろうか。

 実際2017年のノーベル平和賞を受賞した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のベアトリス・フィン事務局長が、「(原爆を投下された)日本の経験を考えると、日本が核兵器を合法のままにしようとしていることに失望している。日本は核兵器がどういうものかをよく知っている。条約を支持しないことで、政府は同じことが再び起きるのを許そうとしている。日本の人々が参加を強く支持していることは知っている。しかし、条約に加入しないならば選挙で選ばないと声を上げるなど、政府に要求する必要があると思う」と日本人の行動にも問題があると語った。今後実施される締約国会議に日本がせめてオブザーバーとして参加することが出来るのだろうか。

 アメリカ大統領選が終了してから、アメリカ外交は本格的に動き出すだろう。日本は相変わらずアメリカの腰巾着となってその指図によって右往左往しながら核保有国と非保有国の間を行ったり来たりするのであろうが、あまりにも主体性がなさ過ぎる。

2020年10月25日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com