4806.2020年7月9日(木) 贈収賄事件で収賄側の罪を問わない?

 昨年7月に行われた参議院選挙広島地方区で、当選した河井案里議員と夫の前法相河井克行衆議院議員が、公職選挙法の買収容疑で揃って逮捕されたが、その後現職を含む自治体首長をはじめ、多くの地方議員が収賄容疑で検挙され、日本中を騒がせる事件となっている。これは、1議員の選挙違反であるだけではなく、夫がいろいろ指図して多額の買収工作を行ったことが明るみに出て、選挙史上まれに見る大掛かりな摘発事件となった。票の取りまとめを依頼したとして、地元議員ら百人に約2千9百万円の現金を配ったとされている。夫妻は買収容疑を否定している。更に普通自民党本部から1千万円の選挙資金が支出されるのだが、河井議員については1億5千万円の高額が支給されていたことも分かり、安倍首相もからんだ自民党本部がらみの買収事件ではないか、と噂されるほどメディアを賑わせている。

 そこへ昨日東京地検特捜部が、公職選挙法違反の罪で河井夫妻を起訴した。法相経験者が逮捕・基礎されたのは、戦後初めてだそうである。ところが、意外というか、腑に落ちないのは、特捜部と広島地検が現金を受け取った疑いのある百人全員の刑事処分を見送ったことである。その理由もすっきりしない。夫の前法相が資金を一方的に渡していたことや、一部は返金したことなどを考慮したらしいと新聞には書かれているが、それはおかしいのではないか。どうも釈然としない。関係者の間でも一律に処分しないことは不公平ではないかとの声が出ている。公職選挙法では、投票や票の取りまとめを依頼する趣旨を認識して金品をもらった側も処罰の対象となる。買収事件では受け取った側も立件するのが一般的である。専門家は、立件したうえで不起訴にするのが筋だとして納得していない。こういうバランスを欠いた凡例が出ると、今後妙な小細工をする輩が出て来るのではないだろうかと法のあるべき姿や、公平性に疑問が生まれて来る。

 それにしても法相経験者が冒した罪は、一見単純そうで、その実かなり奥深いところでゴチャゴチャやっている複雑さがあるようだ。いずれにせよどうして片手落ちなのか、腑に落ちない。結局検察側としては、百人もの人間を正規に起訴していちいち取り調べて裁判をやるのが、面倒だと思ったのではないかと疑ってしまう。

 早速今夕の朝日「素粒子」欄にこんな皮肉が書かれていた。「配った罪は法廷へ。もらった側は100人とも不問。みんなで受け取りゃ怖くない?」

2020年7月9日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com