4776.2020年6月9日(火) 横田滋さん永眠。拉致問題はどうなった?

 去る5日、北朝鮮拉致被害者・横田めぐみさんの父滋さんが87歳で他界された。すでに葬儀を済ませて、今日2人の子息とともに妻早紀江さんが記者会見に臨んだ。滋さんはめぐみさんがいなくなった原因が分からない中で懸命に娘を探し回っていたようだが、見つからず、2002年になって金正日総書記が小泉首相に直接謝罪して拉致を認めた。だが、北朝鮮の説明ではめぐみさんはすでに死亡したと言い、遺骨まで届けられたが、DNA鑑定の結果別人のものと分かり、以後横田夫妻は娘の帰国を願い続けて、拉致被害者家族会の代表者として、全国を講演しながら娘の帰国を支援してもらえるよう訴え続けていた。

 その願いも空しく横田滋さんは逝った。滋さんの無念の気持ちはいかばかりであろうか。

 横田滋さん逝去の訃報を受けて、拉致被害者の帰国実現が政権の最重要課題と言い続けてきた安倍首相は、「(妻とともにめぐみさんを抱きしめる日が来るように努力してきたが実現できず)申し訳ない思いでいっぱいだ」と目に涙を浮かべながら述べたとされている。しかし、本当に安倍政権は他の拉致被害者救出に「努力」しただろうか。拉致被害者5人が帰国してから何らの成果もない。内閣官房内に拉致問題対策本部を設置して定期的な会合、セミナーを開き、情報を伝えているが、政治レベルで具体的に北朝鮮の渉外担当者と話し合いを進めている気配もない。

 知人の軍事アナリスト・小川和久氏から定期的にメール・ニュース「NEWSを疑え!」を送ってもらっているが、昨日のメールに拉致被害者救出について次のように具体的なアプローチを考えたコメントが書かれていた。

 「拉致問題に対する日本政府の姿勢は根本から改めなければならないと痛感させられています。まず、韓国にいる3万人以上とも言われる脱北者の一人一人に対して、徹底的に聞き取り調査を行うことが基本です。聞き取り調査は役人に任せず、新聞記者のOBなど取材(イコール情報収集)の実務経験者を「高給優遇」で3チームほど編成し、一人の脱北者に対して最低3回は粘り強く聞き取りを行うのです。新聞記者のOBらが執拗な聞き取りを行うことにより、脱北者がお金目当てで日本人が飛びつきそうな話をするのを、ふるいにかけてより分けることが可能になるでしょう。そこまでやっても、有力な情報が得られることは期待できないでしょう。しかし、拉致被害者の生存についての『期待できる情報』、あるいはまったく否定的な情報の輪郭だけは把握できるはずです。それをもとに、次なる情報収集のステップを計画することも、あるいは北朝鮮側を動かしながらの調査活動も可能になると考えるべきです。このような根気を要する取り組みは、日本人は得意ではないようですが、先進国の情報機関では常識なのです。韓国の情報機関・国家情報院の北朝鮮専門家も、なぜ日本政府は最も基本的な情報収集活動をしないで、『なにか手がかりになるような情報はありませんか』と聞いてくるのでしょうと首をかしげていました。新聞記者の世界では、担当している役所の中を『なにか(ネタは)ありませんか』と聞いて回るだけの記者は『御用聞き』と軽蔑されます。日本政府の姿勢には、それとダブる印象がつきまとうのは否めません。横田滋さんの旅立ちを機に、いま一度、本気で拉致問題解決への取り組みを考え直すべきではないかと思っています」。

 なるほどと納得した次第である。現場で軍事に携わっていたエキスパートには、それなりの具体的なアイディアが考えられるのだ。どうして安倍政権はこうした人たちの意見を素直に聴こうとしないのだろうか。こんな調子では、横田めぐみさんが帰って来る期待は、まず持てないだろう。

2020年6月9日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com