4775.2020年6月8日(月) 黒人暴動を大統領はどう切り抜けるか。

 アメリカ国内で黒人中心のデモが吹き荒れている。先月27日にミネアポリスでひとりの黒人男性が警察官に首を押さえつけられ、そのまま死亡したことが黒人蔑視・差別と受け取られ、黒人を中心に警察官の行動に対して抗議が起こり、それが全米に拡大していった。今では前代未聞の「抗議デモ」に発展しているが、一部が暴徒化して商店を壊し商品を略奪する輩まで出ている。

 アメリカ社会では過去において黒人の反体制デモがしばしば起きているが、目に見えないところで白人の黒人蔑視がエスカレートし、白人と黒人の対立が深く潜航しているからである。一旦きっかけがあれば、それがすぐ浮上し対立が表面化する構造になっているのだ。今回のデモには、トランプ大統領の対応の拙さがある。大統領は説得して話し合いをする姿勢は見せる気はなく、公権力によってデモを抑え込もうとの意思が強く、今回は州兵ではなく、連邦陸軍を無秩序にもデモ隊を弾圧するために利用しようとした浅はかさがある。

 アメリカの公民権運動の発端となった差別を解消するための運動は、知る限りでも1963年のワシントン大行進で後に暗殺されたマーチン・ルーサー・キング牧師が、‘I have a Dream’とスピーチしたことが強く印象に残っている。もうひとつ、1992年にロスアンゼルスで起きた黒人暴動は、過去最大級のデモ、暴動と言われているが、現在編集中の拙著「八十冒険爺の言いたい放題」の中で取り上げている。というのもちょうど暴動が発生した時、南アフリカではアパルトヘイト是非議論が終盤に差し掛かっていた。偶々南アフリカに滞在してロスアンゼルスの暴動をテレビ実況で観ていたからである。その時南アフリカの恵まれた黒人サラリーマンから、人種差別について思いがけないことを聞いた。黒人の彼が同じ黒人に対して同情の気持ちを示さず、アメリカでもアパルトヘイトをやっていれば、こんな不祥事は起こらなかったと驚くべきことを私に話したのだ。

 かつてのアメリカ大統領は黒人差別問題が騒ぎとなる度に、苦悶していたが、トランプ大統領は果たしてこの難局をどう乗り切っていけるだろうか。彼の頭の中は、人種差別感が充満しているように思える。黒人に対して端から話し合おうという気持ちがない。きれいごとを言っているが、差別主義者である。こういう人物が大統領として君臨していることが、現代アメリカの悲劇であると思う。幸か不幸か、11月の大統領選へ向けてトランプ大統領の評価はこのところ下がる一方である。出来得れば、それが現実となって、トランプ大統領が大統領選において敗れることを期待したい。

2020年6月8日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com