4766.2020年5月30日(土) 国家安全法制へイギリスの鈍い反応

 中国の香港に対する「国家安全法制」が全人代で採択されたことに対して、香港では激しい反対のデモが起きているが、この一連の流れに今まで黙っていた旧宗主国のイギリスが、漸くか細い声を上げた。ただ、タイミングが遅すぎるうえに、その言い分はやや的外れである。イギリスの言わんとしているのは、イギリス海外市民の旅券を持つ香港市民のイギリスにおける在留権を拡大するというもので、現在の6か月を1年にするというものである。この旅券を持つ香港市民は、僅か30万人で、全人口750万人のうちほんの4%にしか過ぎない。

 こんな程度の中身では、中国にとっては痛くも痒くもない。イギリスは自身何のプライドも持っていないのかと情けなくなる。中国が香港に対してこれほど強硬策を行使しようというのは、香港返還に際して英中協定に盛られた「1国2制度」を無視して中国が土足に近い形で香港に押し入ろうとすることである。イギリスは中国政府にプライドも面子も潰されているのに、一言も中国政府に抗議しようとすらしなかった。中国にイギリスは完全に足元を見透かされていることに気づいていない。

 むしろ台湾の方が同朋とのシンパシーがあるせいか、遥かに強く香港市民にエールを送っている。

 悪ノリした中国は、「暴力の阻止や秩序の回復に向け、香港警察を全力で指導・支持する」と更に強硬策をエスカレートしようとする姿勢が見える。明らかに香港警察を中国公安省の強い指揮下に置く意図が窺える。

 自民党内にはこうした中国の行動に対して非難の声が上がり、延期されたままの習近平国家主席の訪日を再考すべきとの声もあり、外交部会では、「1国2制度」や「高度な自治」を中国側の一存で変更したことは由々しき事態で看過できないと批判が強まっている。野党からも批判が高まっているが、今年1月に中国共産党1党支配の中国人民政府の傍若無人の行動に、愛想を尽かして絶縁状を突き付けた日本共産党の志位和夫委員長は、次のようなツィッターを発信した。

 「中国指導部に対し、香港に対する人権侵害強化の動きを中止することを強く求める。中国は『1国2制度』の国際公約を守るべきである。自らが支持・署名した世界人権宣言、国際人権規約、ウィーン宣言など、国際的な人権保障の取り決めを真剣に履行すべきである」。

 志位委員長の中国政府への注文は至極当然である。それに引き換え、イギリス政府の間の抜けたようなのろのろした声明は、果たしてどれほど国際世論から受け入れられるだろうか。

2020年5月30日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com