4645.2020年1月30日(木) イスラエル寄りのアメリカの中東和平案

 アメリカのトランプ大統領が、一昨日ホワイトハウスでイスラエルのネタニヤフ首相同席の下に中東和平案を公表した。パレスチナ側の意向をまったく配慮しない、完全にイスラエル寄りの和平案である。パレスチナ自治政府が受け入れる筈もなく、アッバス議長は馬鹿げていると激しい口調でこの和平案を拒絶した。

 その中東和平案の骨子とは、①パレスチナ国家を樹立し、「2国家共存」を目指す。②ヨルダン渓谷やユダヤ人入植地をイスラエルの領土とする。③エルサレムはイスラエルの首都で、中心部から離れた東エルサレムの一部地域をパレスチナの首都とする。④パレスチナ難民のイスラエルへの帰還は認めない。⑤交渉中は新たな入植地建設を中止する。というものである。

 これだけイスラエルの言い分だけを汲み取ったイスラエルにとって有利な条項はない。イスラエル寄りのトランプ大統領の本音が窺える。

 パレスチナの領土は、ユダヤ人入植地の建設によって分断され、国連やパレスチナ自治政府が主張する1967年第3次中東戦争時の境界線から大きく後退している。

 1967年12月レバノン、ヨルダン、エジプト(当時アラブ連合)、イランなど中東諸国を訪れ、現地の生々しい戦災状況をつぶさに見たが、第3次中東戦争ではイスラエルは、エジプトからシナイ半島、ガザ地区を、ヨルダンから東エルサレムを含むヨルダン川西岸を、シリアからゴラン高原を占領した。シナイ半島とガザ地区はすでに返還されたが、他の占領地はイスラエルが占領したままであり、シナイ高原にはユダヤ人の入植地が建設されている。国連もこの状態を元に戻すことが、現実的な和平へのスタートであるとの立場を取りながら、アメリカの成すがままになっている。

 この和平案に対して従来パレスチナ側へ理解を示してきたアラブ諸国のうち、アメリカと対立しているイランを除いて和平案を評価する声が目立っている。アメリカへの忖度のあまり盟友であるべきパレスチナへ少々冷淡な対応を示している。

 この時期にトランプ大統領が、積極的にイスラエル向きの姿勢を見せたのは、今アメリカ議会で議論されている弾劾裁判や、来る11月に予定されている大統領選で支持者の基盤ともなっているキリスト教福音派へのアピールがあると考えられている。一方のネタニヤフ首相にとっても3月の議会選挙を前に汚職で訴追されており、和平案で逆転ホームランを打ちたいとの思惑があるだろう。

 いずれにせよ何を考えてこんな不公平な和平案を公表したのか理解に苦しむ。当分パレスチナ情勢は好転することはないだろう

2020年1月30日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com