4611.2019年12月27日(金) かつての大英帝国の黄昏

 近年イギリスの国力と存在感が著しく低下したと思う。特にEUからの離脱に伴うお家騒動ぶりはみっともないと思うくらいである。国民投票の結果を棚に上げて政争に明け暮れ首相も交代して、再三EUに迷惑をかけた挙句にEUから離脱することが再確認された。

 25日イギリスは、エリザベス女王が毎年恒例のクリスマス公式ビデオ・メッセージを公表した。今年相次いた英王室のスキャンダルに触れて、女王ご自身イギリスがキリストの足跡を辿る道はデコボコだったと嘆かれた。辛かったお気持ちが想像出来る。そのひとつは、98歳になる夫のフィリップ殿下が運転する車を女性にぶつけその女性を骨折させたことであり、殿下は免許を返納された。もうひとつは、次男のアンドルー王子が未成年女性との性的関係を指摘されて公職を辞める羽目になったことである。

 近年主体性を失い存在感が薄れたイギリスが、ヨーロッパの、更に世界のリーダーとしてかつての偉大な存在感を改めて見せつけることはかなり難しくなった。今でも一部に海洋国家と見られているイギリスだが、その地盤沈下は大きい。

 この機に、中国と対立するアメリカが、インド洋と太平洋のつながりを強めるため戦略的に「開かれたインド太平洋」という地域概念を使って、中国をけん制し出した。一方でEU離脱後のイギリス経済にとって、中国の存在感と影響力は益々大きくなっている。イギリスは対中関係を強化して「一帯一路」を支援しようともしている。世界で主導権を失いつつあるイギリスは、同盟国であるアメリカの動きに合わせてこの地域に目を向けざるを得ないが、地理的にアジアから離れたイギリスがアジアの安全保障面でどの程度関われるのか、何とも言えない。

 それにしてもイギリスの政治力の脆弱さが、哀れに思えることがある。ジョンソン首相率いる保守党政権が、EU離脱により図らずも火を噴き出しかけている北アイルランド、及びスコットランド独立問題の火種を抑えることが出来るだろうか。また、イギリスのトランプと揶揄されるジョンソン首相が、EUや第三国との自由貿易協定締結交渉などを手際よく対処することが出来るだろうか。

2019年12月27日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com