2771.2014年12月14日(日) 中島敦を日経紙が採り上げてくれた。

 旧暦元禄の今日は赤穂浪士の吉良邸討ち入りの一日だったが、駘蕩の国内政局では衆議院選投票日である。昼前夫婦で息子たちの母校・東深沢小へ投票に出かけたが、心配されていたように投票率が低いせいだろうか、スムーズに投票を済ませることができた。これが一昨年の投票の時と大分違う。投票にやって来る人のお顔を見ると年配者が多く、選挙に関心の低いとされる若者層があまり見られない。この情景から最終的に投票の結果が分かるのは今晩遅くになるが、各紙が予想しているように自民党の300議席獲得が現実になりそうな予感がする。これからどんな結果になるか、専門家の講評も合せて明日を待ちたいと思う。

 さて、今朝の日経紙で2つの記事に興味と関心を掻き立てられた。一つは、「詩歌・教養」‘SUNDAY NIKKEI’にノンフィクション作家・梯久美子氏が連載している「愛の顛末」に夭折の作家・中島敦を採り上げてくれたのである。もうひとつは、「日曜に考える」のコラムで「若者50年の足跡」と題して、近年日本の若者、特に男子が海外へ出かけない現象を嘆いている記事である。

 前者は、次回以降も続けて天才作家・中島敦の不遇な生涯と秀作を紹介してくれる。中島は33歳という若さで亡くなったために寡作で、あまり一般的にはその名は知られていないかも知れない。実際私自身も近刊「南太平洋の剛腕投手」を書くまでは中島敦の名を知らなかった。だが、日本の南洋群島占領時代の歴史を追い求めて行くと、必ず中島の名前が出てくる。彼の作品は実に分かりやすい文章で事象を深層まで的確に表現していて、すっかりとりつかれてしまった。そして、文章とその表現が実に巧みである。東大国文科を卒業してから横浜の私立高女の国語教師を務めた後、南洋庁パラオ政庁で南洋群島全域の教育制度、教育自体を整備する任務に携わり、その体験から南洋関係の著作が多く、私も南洋の資料を調査していて中島に巡り合った。

 執筆の参考になる情景は拙著にも採り上げたが、日本の高校国語教科書にも多く採用されているひとりである。絶賛された作品のうち、特に「李陵」、「山月記」の2作品は特別評価が高いが、いずれも古代中国を舞台にしている。手元に中島関係の書と参考書を集めたのも、中島のテーマと文体に魅せられたからである。今日は家族の愛情に恵まれなかった不幸な少年時代が紹介されていたが、来週以降も連載されるので大いに楽しみにしている。

 後者については、男子若者にバックパッカ-のように自分探しの旅とか、新しい物に触れようと海外へ出かける気風が薄くなったことを批判的に論じている。2013年に出国した20~24歳の日本人男子の割合は全体の僅か14%で、同世代女性の28%の半分である。なぜだろうか。私なんか若いころは海外へ行きたくて、行きたくて不自由な環境の中でひとり海外へ出かけるよう努めた。少ないチャンスではあったが、何度か留学にもトライした。不運にも留学することはできなかったが、今の若者は海外留学の気持ちもあまりないという。成長する機会を自ら捨てているように思える。惜しい気がしてならない。

 欧米では17世紀以降自分探しの旅を象徴する「グランツーリズム」が若者の間に根づいているという。欧米の若者にチャレンジ精神や行動力で置いて行かれてしまうのではないかと心配である。これでは、日本の若者に国際感覚が身に付く筈がないではないか。あ~残念だなぁ。

2014年12月14日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com