2784.2014年12月27日(土) 腑に落ちないSTAP細胞調査に対する理研の対応

 今年の10大ニュースのトップにランクアップされた「STAP細胞の発見と偽証」に関する実験捏造調査結果を発表し、以後の調査を打ち切ることを昨日理化学研究所が公表した。STAP細胞は小保方晴子元研究員らが今年1月英科学誌「ネイチャー」に発表したもので、マウスの体の細胞を弱酸性の液体で刺激するだけで作れる新型万能細胞だった。それは不治の病に罹った患者に一筋の明るい灯を燈すものと一時期待された。それが一転して期待が泡となって潰えることになった。

 調査報告書によれば、STAP細胞は新たに作られた細胞ではなくES細胞から作製されたものだと結論づけ、STAP論文はすべて否定されたことになってしまった。科学者としては、証拠がない実験がいくつもあり、初歩的な過失が極めて多く、明らかに怪しいデータがあるのに共著者らがそれを追及する実験を怠った点で厳しい指摘を受けることになった。更に論文中の2つの図に小保方氏のデータの捏造があったとする疑問点まで指摘された。

 しかし、ES細胞の混入が誰かが故意にやった疑いが拭えないと思いながらも、それを実行した人物や故意かどうかの決定はできないという点に首を傾げざるを得ない。混入した人物は限られたスタッフの中にいることがはっきりしているのに、ひとりひとりを尋問して追及することまではやらなかった。やろうと思えばできた筈である。これほど世間を騒がせ、科学界の信用を失墜させる事態を招いておきながら結論をウヤムヤにして中途半端に幕引きしようというのは、犯罪者を出さずに早いところ身辺整理をして、次の予算獲得に向けて組織をあげて再スタートを切りたいという理化学研究所の本音ではないだろうか。

 今年1月に理研がSTAP細胞の発見をノーベル賞ものと誇らしげに発表して以来、理研、並びに主任チームリーダー・小保方晴子さんらは華々しく脚光を浴び大きくマスメディアで採り上げられた。事態が一変したのは、その僅か2ヶ月後の3月になって論文の信憑性に疑問が持ち上がったことからである。4月に理研は、ノーベル賞受賞者・野依良治理事長出席の下に記者会見を行い、今年中にその結果を調査して発表するということだった。それが昨日の調査報告書である。

 科学的な調査は別にして物がなくなったとか、物品の混入があったなどという警察や検察が行うような捜査を科学者のグループが行うこと自体、最初から真実の解明は期待できなかったわけだが、それにしても部外者が立ち入りできない狭い場所で異物が混入されたことを突き止められないのは、所詮素人の域を出ていない。尋問する人の数だってそれほど多いわけではあるまい。それでも精一杯やってみたが、自ら名乗り出る者がおらず、本人が名乗り出ない限り証拠もなしに犯人だと決めつけることはできなかったというのが素人調査班の報告書である。

 ただ、うやむやの内に調査打ち切りを宣告されたことによって、疑念はそのまま持ち越されることになった。わが国科学界の最高峰を自認する権威的な理研としてこれで良かったのだろうかとの疑問が残る。内部の人間に傷がつくことを恐れるあまり徹底的に犯人探しをしようとしなかったことと、責任者の責任をあいまいにしたことが、却って今後研究員は疑心暗鬼の中で研究を続けるということになる。

 いずれにせよ、STAP細胞騒ぎが日本の科学史上、また理化学研究所の歴史に大きな汚点を残すことになったことは間違いない。年の肇に公表された慶祝すべき成果が、年末になって後味の悪い形で幕引きとなってしまった。

2014年12月27日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com