大納会となった今日、東京株式市場は日経平均株価が17,450円、対前日279円安だったが、今年の平均株価は昨年に比べて7.1%高、15年ぶりの高値の大引けだったことを株式関係者はアベノミクス効果と言い、その牽引車たる安倍首相はさぞ鼻高々だろう。
しかし、「アベノミクス批判-4本の矢を折る」を著して平素より安倍政権の経済政策を批判している、伊東光晴・京都大学名誉教授は、「選択」12月号誌上でクソミソにアベノミクスをこき下ろしている。伊東教授と言えば、著名な経済学者としてこれまでメディアにもしばしば登場し、その炯眼ぶりが採り上げられ、私自身経済学を学んだひとりとしていつも遠くから尊敬の眼差しで見ていた。
そもそも伊東教授は、安倍政権の経済政策について極めて批判的である。教授は安倍晋三首相についても就任以来2年間何もやって来なかったと手厳しい。世間では、日銀総裁に据えた黒田東彦氏による金融緩和が、円安と株価上昇をもたらしたとその実績が評価されているが、伊東教授は見解をまったく異にする。伊東教授は円安の因って来る原因は日銀による金融緩和によるものとは見ていない。円安は財務官の専権事項である為替介入によるものであると考えている。
一方、伊東教授には現在の経済政策について2つの主張がある。そのひとつは財政再建をしっかりやることである。しかし、税収が伸びない中で、財政支出は増える一方である。国の借金は増えるばかりである。一部には「経済成長すれば税収が増えて財政が安定する」との主張があるが、伊東教授はそんなことはあり得ないと一蹴する。わが国の財政と支出の乖離に頭を痛め、それだけに消費増税の先送りを懸念している。
教授が心配しているもう一点は、少子化現象である。口では言うが、真剣にこの少子化を心配している日本人が少ないことを憂えている。
それにしても伊東教授がアベノミクスには何らの成果もないとまで批判していることについて、メディアでは何のコメントも反論もせず、ただ株価上昇だけで成果があったような報道をしている。アベノミクスのプラス面、マイナス面について、マスコミは挙げてもっときちんと報道、解説するべきであると思う。