月刊誌「選択」の購読料値上げのお知らせと請求書が送られてきた。お知らせには1975年創刊以来初めての改定だと説明している。2003年から同誌を購読しているが、確かにこれまで1度も値上げをせず、創刊以来44年間も郵送料を含めて12,000円の年間購読料を改定せずに発行し続けてきたのは、インフレを誘導するアベノミクスの下では珍しいと思う。ただ、来る10月の消費税10%への値上げの機会に実行しようというのは、値上げに便乗したものと受け取られかねず、読者を無理やり納得させようとの意図があると勘ぐられかねないこともない。だが、何でもかんでもしたたかに機会を捉えて値上げをしようとする風潮の中で、「選択」の場合は過去の長い据え置きの経緯から推して気持ちは理解出来るので、今回の改定はやむを得ないものだと思っている。
出版社の値上げの言い分を考えてみると、仮に郵送料が創刊時100円だったと考えると年間購読料は10,800円(月額900円)だったことになり、それに10月からの消費税10%を上乗せすれば、現在の年間購読料は11,880円となってこれに郵送料を加算すれば、郵送料込みの新購読料13,200円は実質的には値上げとは言えないと思う。出版社にとって44年前に比べて特段利益幅が増えたわけではない。むしろ、過去30年間消費税分を負担していた点を考えると会社経営にとって重荷だったのではないかと考えられる。その点では、今回の出版社の価格改定の理由は納得出来るものであると思う。ただ、今後近い将来に再び消費税が値上げされたら、出版社はどういう対抗策を考えるだろうか。
平成元年に初めて消費税3%が導入されたが、今や10%になろうとしている。だが、消費税を課している諸外国に比べて、日本の消費税率はまだ低い方である。今では消費税は、国家財政の重要な基本収入となっているのだ。OECD加盟国の消費税の平均は20.2%である。下表に示したように主にヨーロッパ、特に北欧のデンマーク、ノルウエー、スェーデンは25%でかなり高率である。
日本と諸外国の消費税率比較
国 名 | VAT-GST(消費税)率 | 一般消費税収入の | 一般消費税収入の |
オーストラリア | 10.0% | 12.4% | 3.4% |
カナダ | 5.0% | 14.6% | 4.5% |
デンマーク | 25.0% | 20.6% | 9.7% |
フィンランド | 23.0% | 21.1% | 9.0% |
フランス | 19.6% | 16.1% | 7.1% |
ドイツ | 19.0% | 19.4% | 7.1% |
イタリア | 21.0% | 13.8% | 5.9% |
日本 | 8.0% | 9.2% | 2.7% |
韓国 | 10.0% | 17.2% | 4.3% |
オランダ | 19.0% | 17.9% | 6.5% |
ノルウェー | 25.0% | 18.2% | 7.7% |
スペイン | 18.0% | 16.6% | 5.3% |
スウェーデン | 25.0% | 21.4% | 9.0% |
英国 | 20.0% | 20.8% | 6.9% |
米国 | 州ごとに異なる | 8.0% | 1.9% |
OECD平均 | N/A | 20.2% | 6.8% |
日本の消費税は他国に比べてまだ低い。消費税の国の収入に占める割合が比較的低率であることが、国家財政を厳しい結果にして累積財政赤字が150兆円規模にまで膨らませている要因のひとつと考えられないこともない。諸外国の国家予算対消費税額を考えると、いずれ近い将来に再び大幅な消費税値上げの時期がやってくるのではないかと思われる。