今年は戦後70年という節目の年を迎えることから、メディアでも戦後日本の70年企画が種々練られているようだ。今年の終戦記念日や、開戦記念日まで番組企画は目白押しだろう。今日もNHKがアーカイブスで「吉永小百合・戦後70年平和への祈り」として、終戦の昭和20年生まれの女優・吉永小百合さんが広島を始め、各地で行って来た原爆詩朗読の琴線に触れる話を伝えていた。
折しも今朝の新聞訃報欄に、2人の戦争関係者の死亡記事が掲載されていた。ひとりは長崎の原爆で顔などに大やけどを負い、その後は語り部として原爆の悲惨さを訴えていた片岡ツヨさんと仰る方である。享年93歳である。もうひとりは宮城喜久子さんと仰る元ひめゆり学徒隊の方で、この方も亡くなるまで戦争の悲惨さを訴えておられた。享年86歳だった。お2人とも直接存じ上げない方だが、戦後辛かった自己体験から反戦を貫き通した方々である。
昨日の朝日朝刊一面全紙に俳人・金子兜太氏とドナルド・キーンさんの対談記事が掲載されていたが、意外だったのは金子氏が昭和19年に海軍中尉としてトラック島へ渡り、戦後15カ月間捕虜生活を送ったということだった。反戦の土台もトラック島で餓死や爆撃で亡くなった工員兵士を想うと戦争が嫌いになった。年齢は異なるが、森喜朗元首相の父茂喜氏と同じ時期に同じ島で同じように米軍捕虜になっていた偶然にも驚く。
今朝テレビでは、「群衆」という言葉を捉えて、平和運動へ向かう集団とその一方で暴徒化する集団について解説されていた。今危険な集団として世界中から恐れられているグループは「イスラム国」とされているが、世界は彼らを駆逐することができない状態である。地上で起きている戦争は陰湿な争いとなり、人命や資産を壊滅させようとしている。案外関心を持たれていないのは、世界的な文化遺産の破壊についてである。
内戦が続くシリアでは、世界遺産の損壊が深刻化しているという。アサド政権側と反体制派双方が遺跡を軍事拠点に利用して戦闘の舞台になったため、世界遺産のみならず、観光地から観光客の足が遠のき、復興のメドは立っていない。
ヨーロッパでは、移民排斥の動きさえ表れ始めた。移民が労働市場に入り込み、自国民が働き口を見つけるのに苦労している現実が問題を引き起こしていると思いこまれている。ドイツでは、年金、介護分野で移民らが少しずつ恩恵に浴するようになった反面、ドイツ人が当然受け取るべき保障が減殺されつつあることに反対が生まれて生きている。こうした問題がこじれると大きな暴動に発展し、民族対立が起き、支援のグループ次第では大きな争いに発展しかねない。基本的には、自由と経済力を享受することができれば、共存は可能であるが、生活習慣、文化の相違から生まれる軋轢が、対立を生む大きな原因である。
終戦70年の今年1年は、特に注意して争いに向わないよう心しなければならないと思う。その意味では、最近保守的思考が露骨に顕れるようになった安倍首相は、よほど自身の言動に注意を払い、軽挙妄動を慎み一昨年末の靖国神社参拝のように突然の軽はずみな動きで、同盟国アメリカの失望を買ったり、近隣諸国に付け入る隙を与えないようくれぐれも気を付けてもらいたいものである。